『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  107

2011-06-22 06:25:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アンテウスは集まった皆の顔を見て廻った。目線が合う、互いに笑みを交わす、ところどころで声をかけるが、言葉をかけずとも互いの心情を通じ合わせた。
 彼は、集まっている者たちの中央とおぼしきところに座を決めて、アミクスら三人も近くに座らせた。彼ら一同は、ぎらついた食欲をあらわにして昼食を食べた。アンテウスは、一同に話すべく起ちあがった。
 『お~い、皆、今日は朝早くからご苦労であった。台車つくりのほうも終了した。また、運搬道の整備も終わった。昼めしを終えたら、いよいよだ。用材の運搬に取り掛かる、いいな。ところで一同に確かめる』
 ここでアンテウスは、集まっている者たちを鋭い目線で見回した。
 『お前たちの造った台車のことだ。いいか。お前ら、並の状況において壊れることのない台車を造ったか』
 語調が強くなった。
 『もしだ、もしもだ。運搬の道中においてだ、用材を積んだ台車が壊れるようなことがあったらどうなると思う。どうだ。それこそ一大事だ。判るか。けが人が出る、それも一人や二人ではすまないのだ、その台車にとりついている者、全員が怪我するかもしれないのだ。また、それだけではすまないかもしれないのだ、後続の者たちもいるのだ。俺の言っていることがわかるな。各隊の隊長とその台車にとりつく者で、もう一度、台車を点検するのだ、判るな。それくらいの考えで台車を造ったかどうかだ。出発前に台車の仕上がりを、もう一度、入念に点検してほしい』
 彼は鋭い目線で皆を見回した。彼らも鋭い目線でアンテウスを見返してきた。アンテウスは彼らの目線を肌に感じた。彼らは魂をこめて台車を造ったということを肌に感じた。
 『では、隊長の指示に従って、用材の運搬に取り掛かろう。諸君っ!いいか、道中、充分に注意を怠らず、安全を第一で運搬するのだ。判ったな』
 一同は大声をあげた。
 『ウオッ!ウオッ!』『ウオッ!ウオッ!』
 彼らの大声は、森の空気を振るわせた。