『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY           第5章  クレタ島  20

2012-04-02 09:17:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 五番船、六番船は、浜より1スタジオン(約200メートル)ぐらい沖に停船した。他の軍船にあっては4分の1スタジオン(50メートル)ぐらいの地点に船を停めた。船首をそろえて指呼の間隔で横一線に並んでいた。
 『おうっ、アミクス、水深を測ろう。重石をつけたヒモがあっただろう、それを沈めてみろ』
 『はいっ!』
 アミクスは返事を返して作業に取り掛かった。
 この浜は遠浅の浜ではなさそうである。重石は思ったより深く沈んで止まった。アミクスはヒモに目印をつけて引き揚げた。両の腕を広げて寸法の見当をつけた。四尋(ひろ)である。約7メートル余りと思われた。
 『船長、深さはこれだけあります』
 『う~む、これは思ったより深い。櫂座の者たちに指示をしろ。ゆっくり漕いでくれるように言ってくれ。俺の合図で停まるのだ、いいな』
 『判りました』
 船はそろりそろりと浜に近づいてゆく、オキテスは緊張の面持ちで注意深く船の進む先を見ていた。
 宵の藍色は濃くなってきている。彼は水深を気づかって、進み行く船体を触覚化していた。
 この時代、100人くらい乗船させる軍船の喫水は約1メートルぐらいである。船上には100人近い人数がいる。各船の船上の者たちは二番船の動きに注目していた。彼らは二番船からの合図を静かに待っていた。