アエネアスは、夜空の星を眺めながら思い出していた。
このレムノス島は、トロイ戦役の後半に援軍として来てくれたアマゾン女族の島である。アキレスの強刃に抗することが敵わず命を絶たれた女族の長ペンテシレアの率いるアマゾン女賊の母なる島であった。彼は目を閉じ族長ペンテシレアの美しさとその勇猛さを思い浮かべ、彼女たちの冥福を祈った。
そんな彼の頭を、ふうっと横切って通る懸念があった。それはいったい何なのだ、彼は思案した。
『俺たちの建国の途につく心意気はすこぶる高まっていた。何か忘れていることがあるのではないか』
彼は自問自答した。
『この長途の航海に無理を承知で挑んでいる。どこかに避けきれない無理をしているのでは、夜間の航海、天候の変化、荒れる海、海の藻屑、民族の自滅』
思考が悪いほうへと向かった。
『それとも待ち構える未知なる危険との遭遇、民族の運命が俺の愚かな決断によって潰え去る。それは許されない。熱くなってのぼせ頭で考え、意志の赴くままの決断、落ち度があるのではなかろうか』
彼の思考が停まった。
『変更は今をおいてない。今なら間に合う』
そのときである、耳を打つ声がどこかでしている。
『統領、統領』
『誰かが俺を呼んでいる』
彼は耳の打つ声のする方向に向いた。
このレムノス島は、トロイ戦役の後半に援軍として来てくれたアマゾン女族の島である。アキレスの強刃に抗することが敵わず命を絶たれた女族の長ペンテシレアの率いるアマゾン女賊の母なる島であった。彼は目を閉じ族長ペンテシレアの美しさとその勇猛さを思い浮かべ、彼女たちの冥福を祈った。
そんな彼の頭を、ふうっと横切って通る懸念があった。それはいったい何なのだ、彼は思案した。
『俺たちの建国の途につく心意気はすこぶる高まっていた。何か忘れていることがあるのではないか』
彼は自問自答した。
『この長途の航海に無理を承知で挑んでいる。どこかに避けきれない無理をしているのでは、夜間の航海、天候の変化、荒れる海、海の藻屑、民族の自滅』
思考が悪いほうへと向かった。
『それとも待ち構える未知なる危険との遭遇、民族の運命が俺の愚かな決断によって潰え去る。それは許されない。熱くなってのぼせ頭で考え、意志の赴くままの決断、落ち度があるのではなかろうか』
彼の思考が停まった。
『変更は今をおいてない。今なら間に合う』
そのときである、耳を打つ声がどこかでしている。
『統領、統領』
『誰かが俺を呼んでいる』
彼は耳の打つ声のする方向に向いた。