彼は好調の中にあって不安の種子を見逃さないように張りつめた心の状態で船上に立っていた。ここ数日の好天に心を許してはいなかった。
パリヌルスとオキテス、オキテスとパリヌルス、この二人は船団の先頭と殿りにおりながら、シンクロナスな意識で結ばれていた。思考も決断も行動も洋上を行く船団において、その共時性は全く違和がなかった。
船団は先頭を行くオキテスの二番船に同調して海洋を進んでいた。レムノスの浜を出てからの航走時間は、今様の時間で10時間に及んでいた。
陽は西にある、日没が近い、あと一刻で日が暮れ始める。今日の停泊予定の小島が見えてきた。西日にさらされて見える。風向きが乱れてきている、強さも増してきている、波が荒くなり波頭が風に飛んでいた。
『ここまで来ている、この期に及んで何が起こるのだ』
オキテスは危機を感じた。船団の進む方角の空に目を移した。彼はそこに黒雲が覆っているのを目にした。
『俺が浜に着くのが早いか、貴様が襲ってくるのが早いかだ!』
彼は間髪を入れずに指示を発した。
『お~い、アミクス、信号だ。帆を降ろせ!だ』
いい終わるや否や、自船の帆を降ろすことも指示した。
『者ども、嵐が来るっ!力を出しきって漕げっ!漕いで漕ぎまくれっ!』
大声で叱咤した。
パリヌルスとオキテス、オキテスとパリヌルス、この二人は船団の先頭と殿りにおりながら、シンクロナスな意識で結ばれていた。思考も決断も行動も洋上を行く船団において、その共時性は全く違和がなかった。
船団は先頭を行くオキテスの二番船に同調して海洋を進んでいた。レムノスの浜を出てからの航走時間は、今様の時間で10時間に及んでいた。
陽は西にある、日没が近い、あと一刻で日が暮れ始める。今日の停泊予定の小島が見えてきた。西日にさらされて見える。風向きが乱れてきている、強さも増してきている、波が荒くなり波頭が風に飛んでいた。
『ここまで来ている、この期に及んで何が起こるのだ』
オキテスは危機を感じた。船団の進む方角の空に目を移した。彼はそこに黒雲が覆っているのを目にした。
『俺が浜に着くのが早いか、貴様が襲ってくるのが早いかだ!』
彼は間髪を入れずに指示を発した。
『お~い、アミクス、信号だ。帆を降ろせ!だ』
いい終わるや否や、自船の帆を降ろすことも指示した。
『者ども、嵐が来るっ!力を出しきって漕げっ!漕いで漕ぎまくれっ!』
大声で叱咤した。
