『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY           第5章  クレタ島  37

2012-04-25 06:56:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは、パリヌルスの講釈を受け止めていた。
 天候は好い申し分がない、ただ風力不足である。船団はレムノスを遠く離れた地点を航走している、北エーゲ海のど真ん中であった。太陽は頭上にある、船上の者たちを真上からあぶっていた。
 レスボスの島影が左手遠くにかすんで見えていた。風力は出航時に比べて少しはましかなと思われる程度であった。軟風である、風力階級でいうと 3 くらいであり、風速と言えば4~5メートル/秒と思われた。風力だけでの船速は、人の歩速の2倍程度である。
 オキテスはじりじりとしていた。彼の心中は穏やかではなかった。何とかしなければいけないと気がはやった。出航してからこの地点に至るまで、漕いで漕ぎまくって、予定の船速(時速14キロメートルくらい)で航走してきていた。
 『休憩などしている余裕はない。休憩は交替でやる』
 彼は漕ぎかたを叱咤した。
 『漕ぎかた、力を入れろっ!全力で漕げっ!』
 木板の叩く音が響く、彼らの気分をいやがうえにもマックスに導いた。
 『アミクス、信号だ、信号を送れ!全力漕走だ。急げっ!』
 船団の船速があがった。
 彼は船上の者たちの心のベクトルを目的達成へと駆り立てた。
 彼は心の中で雄叫びをあげていた。
 『順調っ、順調っ!この調子だ、うまくいけっ!』