『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY           第5章  クレタ島  36

2012-04-24 08:22:46 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスが重要な課題を思案する、決断を下す。一歩をを踏み出そうとするとき背中を押す奴がいる。また、姿かたちは見えはしないが前へ進むのを押しとどめる奴がいる。何者かが、この俺に力を貸すときもあれば、この俺を引き戻そうとする奴もいる。彼はそのようなことをふと考えるときがある。
 今日の海は穏やかであった。北から吹く風は軽風(風力階級2くらい)であり、頬をなでて過ぎる風であった。
 『これから時間も経って、海洋の真ん中に出れば風力も少しは強くなるであろう』
 彼は心の中に淡い期待をだいた。風向きはこのままでいい、ただこのまま、危険と遭遇せずに今日の航走を終えたいとそれのみを念じた。今日の無事がなければ、我々に明日はない。
 殿りの一番船の船上でも穏やかな海が話題となっていた。
 『パリヌルス、穏やかだな』
 イリオネスが声をかける。
 『え~え、穏やかです。穏やかであるばかりに明日が気にかかります。エノスにいたときから好天が続いています。こんなときこそこの裏目の天候に気を配らなければならないのです。少々の天候の変化が我々に難題を吹きかけるのです。命取りの荒れた海になります。陽も照って風がないのに波だけが荒れて荒れまくることもあるのです。今日みたいな日こそ油断は禁物なのです。謙虚に天候には逆らわない。これが難事を避ける鉄則です』