『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY            第5章  クレタ島  70

2012-06-11 07:58:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 乗船したオキテスは、出航の号令を発した。
 『一同、いいな。出航する。帆を揚げっ!漕ぎかた始めっ!』
 彼は号令を発しながら舟艇を見ている、オキテスの大声は舟艇にも届いていた。舟艇は六番船の右前方にいた。彼らは、センターの帆、それに船尾の三角帆も揚げていた。風を受けて海面をすべるように航走し始めていた。櫂の使用は必要ないらしい。。
 六番船の船上では、統領、軍団長、アカテス、ユールス、そしてオキテスが手を振っていた。アミクスはというと船上を飛び回っていた。漕ぎかたをリードする木板の打音は調子を伝えていた。
 海面を泡立てる櫂、白く航跡を残して遠ざかっていった。
 浜にいるパリヌルスは、一番、二番、三番船を見ながら、オロンテスの五番船、四番船に出向いた。
 『お~お、オロンテス、ご苦労。どうだ、出航はできるか』
 『四番船は、もう海に入りました。五番船はこれからです。助っ人を頼みます』
 『判った』
 パリヌルスは、大声をあげて一番から三番船の者たちを呼び寄せた。彼らは、浜に座している五番船に一斉に取りついた。
 船をズリ動かす掛け声があがる。掛け声は黎明のときを迎えつつある浜の静けさを裂いた。
 五番船は難なく海に浮かんだ。