『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  80

2012-06-25 07:30:18 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、航走に注意を払いながら、小島からミコノス島に向けての航海をふりかえっていた。
 『風の具合で少々おくれたようだ。この分でいけば、全船、何事もなく停泊地に着きそうだ。カイクス、お前どのように考えている?』
 彼は横にいるカイクスに声をかけた。
 『この調子で行けば、無事、停泊地に着けるのではと考えています。今、この宵の暗さでは、前を行く統領の船の姿見えなくなっています。船長、信号を送って、何か確かめたい用件がおありなのではないかと考えています』
 パリヌルス船長に尋ねた。
 『おうっ、そうだな。ミコノス南端の浜もすぐそこだ。よしっ、信号を送れ』
 カイクスは舳先に立って、前方に向かって松明信号を六番船に向けて送った。少々間をおいて六番船から返信を受けた。
 『交信OK!』信号である。カイクスはためらわず信号を送った。
 『当方、無事。変事なきや。当方、停泊地に向かう』
 返報が届く。
 『当方も無事。程なく、停泊地に着く。本日の交信、これを持って終わる』
 安心度の高い返報であった。カイクスはこの旨をパリヌルスに報告した。
 パリヌルスの船団は、進路を北に向け停泊予定の浜に向かった。