『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  76

2012-06-19 06:51:18 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスはイリオネスの言葉を引き取った。
 『いいでしょう。後事は私が担当します』
 『オキテス、お前に任せる。頼む』
 『判りました。ところで、ここまでの話の中でも触れてはいませんが、統領は、デユロスのどちらへ出向かれるのですか』
 『お~お、それについては言ってなかったな。行く先はアポロンの神殿だ』
 『そうですか』
 『統領の父上が、我々民族の建国についての神託を聞いておられる。その真偽のほどの確かめがデユロスにおける用向きだ』
 『判りました』
 『これについて、ひと言、統領から説明がある。統領、お願いします』
 『この事について俺の考えを簡単に伝えておく。俺は神の存在を是としている。大いなるもの、まあ~、言うなれば自然が神であろうと考えている。深くは考えてはいないが、そのように感じている。俺たち、人間をも含めてだ。随分前に戻るが、父はアポロンの神託に接している。父はそれに基づいて今の俺があると言う。それの真偽のほどを俺自身が確かめておきたい思っている。我々を迷わせる何かがあるとすれば、その迷いを断ち切っておきたい。その上で如何に行動すべきであるかを考えている』
 彼はここで言葉を切って、二人と目を合わせ、心の中を覗き見るように見つめた。