『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY            第5章  クレタ島  83

2012-06-28 07:01:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 海の深さを調べ始めた。
 担当の者は、六番船の喫水の深さを考慮して重石を結びつけた綱を海中に垂らし、舟艇の進みに合わせて海中を引きずりながら計測した。
 この時代である。言葉で計測と表現するも大まかな作業であろうと想像されたい。
 海底の起伏がおかしい、深さが一様ではない、いま、深かったと思えば計測の綱の重石が海底に当たる。次の瞬間、海中に転がっている石か岩に重石が当たる。この状態では岸に接近して停泊することは大変に危険である。
 担当した者が報告した。
 『オキテス隊長、この深さと海底の状態では船を岸に接近させることは、とても危険です。海底には大きな岩石が各所に散らばっています。岸へ接近しての停泊はしてはならないと考えられます。以上です』
 オキテスは担当の者の報告にうなづいた。彼はギアスと相談した。
 『ギアス、この海底の状態、海岸のあり方をどう考える?』
 『隊長、もう少し、海岸の状態を調べてみましょう。その上で決定と言うことにしてはいかがでしょう。岸に沿って舟艇を北上させます。いいですね』
 『判った、よかろう。そうしてくれ』
 舟艇は松明で岸を照らしながら進んだ。深度調査をしている者が声をあげた。
 『隊長、この辺りは海底の起伏が平坦であるように思われます。岸へ接近してみてください』
 ギアスの指示で舟艇は岸に近づけて、辺り一帯の状態を丹念に調べた。
 『おうっ、この辺りの岩石の粒が荒々しくない。海底の具合はどうだ』
 深度計測を慎重に続けながら調査をすすめた。