『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY            第5章  クレタ島  72

2012-06-13 06:48:35 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『判ったな。続いて二番船、一番船が殿りだ。よしっ!船を海へ入れる。出航だ』
 全員が各船に取り付き、砂浜に線条を引いて海へとズリ動かした。
 『お~い、アレテス、これはだなミコノス近辺の島の位置を書き記した木板だ。よく見るのだ。ミコノスの○印は、この船団の今日の停泊予定地だ。パロスの×印は、明後日の集結地点だ。△印は第一船団のデユロスの停泊地だ。□印は第二船団の停泊予定地だ。いいな。持っていくのだ』
 パリヌルスは、海を見つめた。
 『三船とも海に入った。出航だ。アレテス、行けっ!お前の船が先頭だ。しっかり漕いで行けっ!』
 三番船が波を割った。二番船が続く、殿りの一番船が海面を泡立てた。全船が浜を離れた。東の空には太陽が昇り終えていた。
 全船団が適当な距離をおいて南下していった。緯度をこの辺りまで下ってくると外気もエノスに比べて暖かく感じ過ごしやすかった。
 洋上を渡る風は、小島を出航したときに比べ強さを増していた。かぜは北からの風となり、空には雲もなく、秋の陽射しが海上を行く彼ら一行に照りつけた。
 洋上を行く各船は、櫂をあげ風力による航走としていた。彼らは心に平静さを取り戻していた。