『アヱネアスよ、少し休もうではないか、過去については語り終えた。お前にとっても俺にとっても大切なのは、これからのお前なのだ、アヱネアスであり、ユールスなのだ。少し休んで、これからを話し合おうではないか。お前は、私にはまだ話していない、イデー山のゼウスの神殿で受けた神託について聞かせてくれればありがたいし、俺にとって、大変うれしい』と言って堅パンをつまみ酒杯の酒を口に運んだ。
『アヱネアスよ、考えてくれ。俺たちがクレタに赴く折にデロス島に立ち寄り、アポロンの神託を受けている。そして、船の進路を南へととり、このクレタに上陸し居を構えた。俺らは、神託を正しく理解したか、それとも神託の言わんとするところを理解しなかったか否やである。または、俺らが神託を正しく理解したか否かも検証しなければいけない。それとだが、俺とお前では神託を信ずる割合がどうかという問いかけもあると思う』
アンキセスは、言葉を切る。息を継いで話し続ける。
『このことについて俺の考えを述べる。お前に聞いてもらいたい重要なことである。年老いたる者は、知恵を持っている。だが、時代に即した知識を有しているかと言えば、そうであるとは言いきれない。また、物事に関する技術、技倆についてもそれが言える。これはおおまかな人間論だ。そのあたりについても俺とお前は解り合わねばならない。次はこのことについて話しよう』
アンキセスの問いかけである。アヱネアスははっとした。父アンキセスの鋭い指摘である。振り返って考えてみれば、冷や汗の出る自分の決断あのときのことを振り返って思い起こした。
クレタに向かうことが、今、自分の決断として正しいとして、それが間違っていても、それを正しく修正して進むことができるという決断の軽さがあったのではと考えた。しかし、彼は考えた。それは自分自身に課した摂理の至妙な計画として受ける大いなる時空の中にいると結論した。しかし、それは己の為す良き知恵としての良知をいたしのか判別していなかった。
話すことを休んでいたアンキセスが口を開いた。
『アヱネアスよ、100年200年で途絶える国を建てても、そんなもの建国したとは言えない。判るか、1000年2000年と繁栄する国を建ててこそ建国と言えるのだ。そうではないか。アヱネアス!』
彼は強く言葉を結んで言いきった。
『アヱネアスよ、考えてくれ。俺たちがクレタに赴く折にデロス島に立ち寄り、アポロンの神託を受けている。そして、船の進路を南へととり、このクレタに上陸し居を構えた。俺らは、神託を正しく理解したか、それとも神託の言わんとするところを理解しなかったか否やである。または、俺らが神託を正しく理解したか否かも検証しなければいけない。それとだが、俺とお前では神託を信ずる割合がどうかという問いかけもあると思う』
アンキセスは、言葉を切る。息を継いで話し続ける。
『このことについて俺の考えを述べる。お前に聞いてもらいたい重要なことである。年老いたる者は、知恵を持っている。だが、時代に即した知識を有しているかと言えば、そうであるとは言いきれない。また、物事に関する技術、技倆についてもそれが言える。これはおおまかな人間論だ。そのあたりについても俺とお前は解り合わねばならない。次はこのことについて話しよう』
アンキセスの問いかけである。アヱネアスははっとした。父アンキセスの鋭い指摘である。振り返って考えてみれば、冷や汗の出る自分の決断あのときのことを振り返って思い起こした。
クレタに向かうことが、今、自分の決断として正しいとして、それが間違っていても、それを正しく修正して進むことができるという決断の軽さがあったのではと考えた。しかし、彼は考えた。それは自分自身に課した摂理の至妙な計画として受ける大いなる時空の中にいると結論した。しかし、それは己の為す良き知恵としての良知をいたしのか判別していなかった。
話すことを休んでいたアンキセスが口を開いた。
『アヱネアスよ、100年200年で途絶える国を建てても、そんなもの建国したとは言えない。判るか、1000年2000年と繁栄する国を建ててこそ建国と言えるのだ。そうではないか。アヱネアス!』
彼は強く言葉を結んで言いきった。