『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  857

2016-08-30 04:34:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 張り番担当の者たちは、かがり火の明るさを落とさないように薪をつぎたし、炎の勢いに気を配って夜を過ごした。
 第一夜であるこの夜は、何事もおこらず、平穏無事の夜を過ごし、新しい朝を迎えた。
 浜の新しい朝である。浜は常日頃の活気でにぎわった。
 オロンテスがキドニアに向けて船出しようとしている、オキテスが駆けてくる。
 『おう、オロンテス、納入第一号艇が明後日に完成する。集散所側と納入日を打ち合わせてくれ!納入場所、納入期日、時間までだ、それによって我が方も段取りをしなければならない。そういうことだ』
 『解った、納入日等の打ち合わせの件、了解!それが決まれば、その旨をスダヌス浜頭にも連絡するのか?』
 『おう、それでいい』
 キドニア行きのヘルメス艇は、波を割って浜を離れていった。
 パリヌルスは、三番船隊の編成に朝から着手した。イリオネスとオキテスが姿を見せる。
 『おう、パリヌルス、それにオキテス、野営隊編成の件だが、当面、二番船隊、三番船隊で努めるようにしてほしい。スダヌス浜頭のところへ兵の派遣をしなければならないかもしれない。そのようなわけで四番船隊はそのままにしておいてくれ』
 『解りました。その件、了解しました。二番船隊、三番船隊で野営の任務に就きます』
 『解ってくれたか、ありがとう。パリヌルス、用件はそれだけだ。よろしく頼む』
 場を離れていくイリオネスは、建造の場へと歩んでいく。建造の場に姿を見せたアヱネアスとイリオネスは、じっくりと浜を見て廻った。
 今日も建造の場に訪問者が訪れる。
 オキテスは、訪問者の人品骨柄、話し言葉、風体考察に、目配り、気配りをおこたらなかった。
 彼は、ドックスと細かく打ち合わせを行い、納入第一号艇の完成に全神経を注いで製作に当たった。
 今日も午後半ばを過ぎて、集散所担当の者たちがキドニアから帰ってくる、オロンテスが建造の場に来る、オキテスに話しかけた。
 『おう、オキテス、奴らが襲撃してくるのは、夜更けらしい、寝いりっぱなに襲われたと聞いているそうだ』
 『そうか、解った。心する』
 『それから、新艇の納入は、五日後の新月の日にすることになった。それで調整してくれと言っている。納入艇のひき渡しの場所と時間のことだが、注文主と打ち合わせて知らせると言っていた』
 『解った、了解した。俺の方は、それで入念、完成させる』
 オキテスと打ち合わせを終えたオロンテスは、イリオネスの宿舎へ足を向けた。