『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  858

2016-08-31 05:57:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 日が替わる、今日も好天である。アヱネアスが建造の場に歩を運んできた。
 『おう、オキテス、新艇第一号納入、新月の日にやるということか。ついにその日が来たか、感無量だ。明日、完成すると言っていたな、キドニアへ運ぶ、運ぶ手段について考えているのか』
 『それについては、曳航していくことにしています』
 『そうか、注文主もそうだが、我々にとってもめでたい日である。この前、言っていたように注文主に感動を届ける、どのように演出するか考えろよ』
 『解りました。力いっぱい考えます』
 『始計第一、まず、計画をつくる、今回は話し合おう。今後のこともある。パリヌルスは、どこにいる?姿を見ないが』
 『はい、今、パリヌルスは小島へ出かけています』
 『昨日、今日と2日続きで試乗会をやっているとのことだが、結果はまだだな。ところで、テカリオンのことについて何か聞いているか?』
 『いえ、聞いてはいませんが』
 『そうか、もう来てもいい頃だと思うが』
 『そうですね』
 『朗報は寝て待とうか』
 『そうして下さい』
 アヱネアスは、日ごとに形を整えて仕上がっていく新艇、その作業に勤しんでいる者たちをしげしげまじまじと見ながら場をあとにする。吹きすぎる風に髪をなびかせ、身をなぶらせて浜を見て歩いた。
 彼の心の中にも強く風が吹いている。吹きすさぶ風、船体を打つ大波、嵐の海洋を乗りきらねば、船上の者たちが海に呑まれてしまう。船上の者たち全員が力を合わせて荒海と闘っている。その情景をまぶたの裏に描き浮かべる。男の闘う姿と同時に、新しい小型戦闘艇構想を想い浮かべる。また、早いか、遅いか、クレタを去る日が必ず訪れる。その決心が日ごとに固まりつつあることを感じている。アヱネアスはふと思う、なんでも脈絡もなしに思い浮かべ考える。『人間とは不思議な生き物だな』と、去就するいろいろな思考にピリオドを打った。
 彼は、波打ち際に立つ、顔をあげ、陽の光にきらめきおどる海浪の海を眺め、海濤の彼方に想いを馳せた。
 小島の方向から、一艘のハシケが近づいてくるのを目の端にとらえる、顔を向ける、目にパリヌルスの姿をとらえた。
 アヱネアスは、ハシケの到着を待つ、浜に乗りあげるハシケ、飛び降りるパリヌルス。
 『あッ!統領!』
 『おう、パリッ!小島の様子はどうだった?』
 『はい、この時期は小魚が多いのですね。アレテスに言われて状況を見に行ってきました』
 『そうか、小魚、うっう~ん、子魚じゃないのか』
 『そうです。何か考えないと水揚げも結果ですが、その先の結果が小さくては、労多くして益少なく結果ままならずです』
 『そうか、そのような苦労がついて廻るとはな。思ってもやらなかったな。俺の不明とするところか、パリヌルス、何か解決の意図口があるか考えてくれ』
 『解りました。考えて解決できるかどうかやってみます』