『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1220

2018-02-09 08:26:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスがドックスに厳重姿勢でのチエック作業を促す。
 『解りました。これまで私なりに完璧の船造りをやってきました。隊長の言われること、注文主の要望、それらに応えられるよう、チエックの標準を規定して、以下の排除を考えます』
 『ドックス、お前が造る船が注文主に引き渡されて、使用される、我々が想像する以上の長きにわたって使用される。船として長期間の使用に耐えることのできる頑丈さが問われている』
 『そういうことですね!』
 『艇体の構造、艇体製作に使用している部材、工作金具類等が、その結果として、たぐいなき頑丈な船となっていることが問われる。天下一の船造りの棟梁である、お前の確かな目でチエックしてくれることを望んでいる。解ってくれるな』
 『解りました。明日、昼過ぎまでにそれらのことを吟味してチエックします』
 『艇体に損傷を与える想定される海上条件に対する対応は、パリヌルスが充分に検討して、艇体構造を考えて建造している。起こりうる海上条件のすべてについての対応結果は、このたびの長途の航海で検証しているといっていい。だがだ、試作戦闘艇をチエックして調べてほしい。それを明日、夕刻までにやって、それらの結果を携えて会議の場に来てほしい』
 『解りました。私らが手掛けているその作業が適切に行われているかについても、チエックで検証できると考えています』
 『ほう、作業の質の検証か。それは俺の盲点であったな。ドックス、よろしく頼む』
 建造に関する細かな点についてまで、チエック、検証の作業要点を打ち合わせた。
 ドックスが建造の場の終業を告げる。久々に彼らの前面に立つオキテスは、終礼を行う。
 西に傾いた太陽が海面を茜色に輝かせ始める頃合いである。

 航海から帰って一夜が過ぎる。
 今日も快晴の朝である。落ち着いた海を眺めて立つイリオネスは、この7日間を振り返っている。
 彼は東に目を移す、半島岬から北方向に水平線が伸びている、昇ろうとする太陽が水平線を破ろうとしている。
 太陽が水平線を破る、待ちかねている陽の光の第一射が届く、その光を朝行事を終えた身に浴びる。
 水平線を離れ始める日輪、常の日よりひとまわり大きく目に写る。
 『今日も一歩、前へ歩を踏み出そう!』
 彼は高みに昇ろうとする日輪と約束を交わす。
 彼は、行き交う者らと朝の挨拶を交わす。
 『いい朝です!』
 『おう、いい朝だ!』と語尾を強く締める。
 短い言葉に気慨を込める。
 この一語が挨拶を交わす相手の心を昂ぶらせる。モチベ―トのやる気を沸かせる。
 交わす目線は、鋭いが優しさを込めた目線である。彼らの意欲に満ちた今日がスタートする。
 イリオネスは、遠ざかる彼らの背中を見つめる。
 『遭遇する難問解決、一歩前進!』と彼らの幸多き今日を約す。
 彼は感慨に浸る。
 『今ありて時代は連なる!』であった。