『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1231

2018-02-26 08:00:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 昼食を終えた二人がパン売り場に戻ってくる、売り場にはトミタスが待っている。
 オロンテスがトミタスに声をかける。
 『おう、トミタス殿、ご苦労。待たせましたかな』
 『いえ、そのようなことはありません。約束の文言を書き記した木板を持参しています。目を通していただければ幸いです』
 トミタスが文言がかかれた木板をオロンテスに手渡す。
 木板には、例の両刃の斧の焼印がある。書かれた文言に目を通すイリオネス、約束事が領域の広い言葉の文言で綴られている。
 手渡される木炭、イリオネスは、丁寧にサインを入れる。
 『トミタス殿、サインいたしました。木板を渡します。ハニタス殿によろしく伝えてください』
 『ありがとうございました』
 トミタスが売り場を去っていくイリオネスとオロンテスがこれを見送る。イリオネスは、キドニアにおける今日の仕事を終えた。
 業務を終えたイリオネスがオロンテスに話しかける。
 『なあ~、オロンテス。キドニアの集散所の歴史はどれくらいか知らないが、ある水準で商取引の手法をルーチン化している。今日の会談は、それに乗せられたというか、乗ったというかはわからない。生かさず殺さずではなく、相手を生かす共存の姿勢がうかがわれるところが憎い。物事をやる!成果が大きな結果を生むように仕組まれている』
 『そうですか』
 『会談の成果が我らに取って有利に展開したことは確かだ。利益を得るという目で見ると成果が確かである。そのあたりが重畳あるといえる。あの文言は、船舶を商っていくうえで必須の事柄が書き記してある』
 『そうですね。会談内容と結果は、我々にとってよかったと考えられます。軍団長の勘働きが冴えていました』
 『お前、なかなかほめ上手だな。誉める!それは相手を活かすということだ。このあとお前とオキテスが中心になってこの業務を遂行する。解ったな』
 『了解いたしました。明日、明後日のパンの受注も受けました』
 『そうか、それは重畳!俺は一足先に岸壁のほうに行く』
 『解りました』
 イリオネスは、岸壁へと向かう。
 オロンテスは、ここのところの好調なパンの売れ行きに気をよくしている。今日も持ち来たパンのすべてを売りきる。
 最後の客から、明後日のパンの予約を受けて、売り場を閉じようとする。
 客から声がかかる。思いがけない話である。
 『チョッと、尋ねるがよろしいか?船の事だ。船の試し乗りがしたい!出来るかどうかだ。四日後にその打ち合わせに来る。その都合を決めておいてくれ』
 『はい!解りました。打ち合わせの件、了承しました。お待ちしています』
 『おう、では、その時にな』
 客は言い残して去って行く、オロンテスは売り場を閉じる、帰途に就いた。