『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1230

2018-02-23 08:30:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 集散所の部屋をあとにした二人は、パン売り場に向けて歩を運んでいる、立ち止まる。
 『おう、オロンテス、今、頃合いは?』
 『はい、そろそろ昼めし時になります』
 『そうか、売り場によらずに広場へ行く。一緒に行こう、スダヌスが待っている』
 『軍団長、先に行ってください。売り場を見て、パンを持参して広場に行きます』
 『そうか、おう!』
 イリオネスは、広場に向かう、オロンテスはパン売り場に足を進める。
 広場ではスダヌスが待っている、陽が射しかける広場で汗を流して焚火を燃やしている。互いに姿を見とめる、手が降られる。
 『おう、スダヌス、待たせたな。すまんすまん』
 『いえいえ、待てば海路の日和です。オロンテス殿は?』
 『もう、来る頃だ』
 広場への出口に目をやるスダヌス。
 『お~お、来た来た!姿が見えました』
 イリオネスは、二人に気づかいするスダヌスの気持ちがわかる。
 『おう、浜頭、遅くなった、申し訳ない。久しぶりに元気な浜頭に会えるとは、幸いなるかなですな』
 『おう、オロンテス殿、いかがかな、元気ですかな?同じ屋根の下で仕事をしているのに、久しぶりとはな』
 『そりゃあ、しゃ~ない!同じ屋根の下で仕事をしていても歩んでいる道が違う』
 『おう、それは言えてる。俺は魚の道、お前はパンの道だ』
 浜頭が焚火に目をおとす。
 『おう、食べるものがいい具合に焼けている。昼を始めましょうや』
 『腹が叫んでるわい!』とイリオネス。スダヌスが二人に酒杯を手渡す、すかさず、酒を注ぐ、三人の昼食がスタートする。
 『おう、スダヌス、この魚、めっぽううまい!』
 『これからがこの魚の旬ですな。まだ、はしりですから充分にうまさがのっているとは言えませんが』
 三人がいい具合に焼けた食材を口に運ぶ、酒杯をあおぐ、パンをほおばる、昼めしに専念する。
 イリオネスが言う。
 『スダヌス浜頭、こうして昼をする。やみつきになるな』
 『そうですか、そういっていただけると、俺はうれしい!』
 オロンテスは、二人の会話の聞き役をつとめている。スダヌスが声をかけてくる。
 『オロンテス殿、いかがです?昼便のアレテスに日ごろ苦労をさせている、時たま三人で昼をしましょうや』
 『いいね!やりましょう。互いの絆が太くなる。いいことばかりで悪いことは一つもない!』
 オロンテスは、多くは言わないが、表情に喜びをたたえて応える。
 歓談がはじける、三人の心のコリがほぐされていく昼食であった。