『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 1223

　ドックスがオキテスの前に立つ、報告に及ぶ。
　『オキテス隊長、只今、建造中の戦闘艇のすべての面に及び点検を済ませました』
　『おう、そうか。ご苦労！何か話し合うことがあるかな？』
　『いえ、ありませんが、隊長にその詳細の報告の件ですが？』
　『それは、会議の席で話してくれれば、それでいい』
　『了解いたしました』
　『パリヌルス、頃合いはどうかな？』
　『そうだな、もう行こうか』
　三人は、会議の場へと歩み始める。
　会議の場ではアエネアスとイリオネスが真剣に話し込んでいる。民族の未来を見つめている目である、二人が三人に目を向ける、三人は緊張する、アエネアスが声をかける。
　『おう、お前ら早いではないか、オロンテスがまだ来ていない』
　『指示を受けた全作業を終えました』
　『そうかそうか、パン工房へオロンテスを呼びに行ってきてくれ』
　『はい！解りました』と応えて、パリヌルスがパン工房へオロンテスを呼びに走る。四人を待たせることなく、六人の顔が揃う。
　イリオネスが口を開く。
　『おう、一同の顔がそろったな。午後の会議を開始する。オキテス、原価の算出うまくいったか？』
　『はい、いい具合に算出できました。この通りです。目を通してください』
　オキテスが原価計算の結果を書き記した木板をイリオネスに手渡す、木板には二つの数値とその合計が書かれている。
　一つは、建造に関する原材料と建造に必要な金具留め具類の合計数字であり、二つ目は評価しがたい作業者らの建造労務費のオキテスが推考した数字である。
　アエネアスとイリオネスがその数字を見てうなずき合う。
　『おう、オキテス、よくできている、軍団長、俺とお前が計算した概算数字とほど近い、重畳！軍団長、お前の意向は？』とアエネアスがイリオネスに問いかける。
　『はい、オキテス、お前が算出した数字だが、統領と俺とが計算した数字とほぼの合致だ。俺の考えでは、戦闘艇１艇の客への引き渡し価格を集散所側とよくよく検討して、１８８０ドラクマから１９５０ドラクマあたりで決着させようと考えている。一同の考えを聴きたい』
　イリオネスは、語尾に力を込めて、パリヌルスら三人に問いかける。
　『異議はありません』
　三人はイリオネスの問いかけに賛意を示す。
　イリオネスが一同に向けて言葉をかける。
　『一同！では、そういうことで、明日、集散所側と話し合って引き渡し価格を決める。いいな』
　続けてイリオネスは、オキテスに声をかけた。。