『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  104

2011-06-17 07:03:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスは、目を細めてアンテウスと目をあわせた。
 『ところでアンテウス、運搬の方はどのように予定を立てている。よかったら聞かせてほしい』
 『はい、道路整備の連中も程なく仕事を終えて帰って来ると思っています。それで、広場にまだ使える台車が5~6台あるそうなので、それを引いてかえって来る手筈になっています。それがくれば台車の数が、都合23台になります。彼らが帰ってくる、台車が一斉に仕上がります。昼めしを終えたら、用材を積んで出発の予定にしております。今日は日暮れまでに2回、明日は昼前に1回そのあと日暮れまでに2回の運搬とそのように予定を立てています』
 『おっ、そうか。それでは俺の方も、それに合わせて段取りをしなければいけないな。よし、判った。計画どうりに仕事が進み、決着するように手配りをする。アンテウス、いざ、運搬にかかるようになったらその前にちょっと連絡をしてくれ。それに応じた準備を整える』
 『手配方よろしくお願いします。浜の方の受け取り方の手配は出来ておりますか』
 『それは準備万端おこたりなく手配できている。向こうには、リュウクスとセレストスが待機している安心して行ってくれ。お前の方の最終便と一緒に俺も浜の方へ帰る。その予定だ』
 『判りました』
 二人は、互いの手を堅く握り合った。

第3章  踏み出す  103

2011-06-16 06:32:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お~い、アミクス、どんな具合だ、順調にいっているか』
 『え~え、うまくいっています。しかし、あれですね。私は台車造りをとても気にしていたのですが、あれですね、案ずるより生むがやすいと言うことですね。皆がこんなに励んでくれるとは思ってもいませんでした』
 仕事に励む者たちの目がいきいきしていた。
 『ところで、アミクス、リュウクスを呼んでくれないか。打ち合わせておきたいことがある』
 アミクスは、リュウクスを大声で呼んだ。二人がアンテウスの前に立った。
 『おい二人、ところで仕事の進み具合はどうだ。俺は、台車が出来上がったら、直ちに運搬にかかろうかと思っている。日が暮れるまでに2回運搬をやりたい。二人の意向を聞きたい』
 アミクスが答えた。
 『隊長の希望をかなえます。やりましょう。台車が出来上がり次第、試したうえで直ぐに運搬にかかりましょう。私たちもその心算で仕事をしています』
 『リュウクス、お前の方はどんな具合だ』
 『私の方も、いけます。隊長の段取りに乗れます』
 『よしっ、判った。その手順で事を進める。二人ともいいな』
 『いいですとも』
 二人は口をそろえて答えを返した。
 アンテウスは、空を見上げ、太陽の位置を確かめた。陽はまだ南中していない高みにあった。彼は、これならいけると確信した。
 オロンテスがアンテウスらの仕事の場にやってきた。
 『お~お、アンテウス、ご苦労、ご苦労。台車造りの進む具合はどんな具合だ、うまく運んでいるか』
 『え~え、順調です。思いのほか進み具合が早く、もう終盤にかかっています。全台車、一斉に仕上がる予定です』
 『それは、重畳、重畳』
 オロンテスは、ヒザをうって喜んだ。

第3章  踏み出す  102

2011-06-15 07:16:45 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『アミクス、ひとっ走りだ、アバスに伝えてくれ。運搬道の整備を終えて、こちらに帰ってくるとき、西門前の広場にある台車5~6台が使えると思うから引いてくるようにと伝えてくれ。その時、台車のクルマの転がり具合を試しながらだ、整備した道に不具合があったら手直しして帰って来いと伝えるのだ。いいな』
 『了解しました』 と答えて駆け出した。
 台車造りは、まず、材木の丸みを生かした車輪造りからである。材木を20センチくらいの幅で輪切りにする、そして、年輪を良く見定めて、中央に車軸を通す穴を穿って造ることから始まった。
 アンテウスは、一隊当たり5台の台車を造るように指示した。彼は彼らの仕事ぶりを見渡した。仕事を進める彼らは、手馴れた雰囲気で作業をこなしていくではないか、彼は舌を巻いた。
 アンテウスは、現場を見ながらリュウクスに声をかけた。
 『リュウクス、見たところ、連中なかなかやるではないか。この調子なれば、台車がうまく出来上がるな』
 『へっへ、このような仕事、私は大好きですね。『好きこそ上手なり』の諺どうりですよ』
 『お前、なかなかうまいこと言うな』
 二人は、話しながら、皆の仕事ぶり見回っていった。
 台車の木組みに難儀しているグループもいる。リュウクスはその様子を見て、二言三言アドバイスをした。
 『お~い、リュウクス、こっちのグループもちょっと見てやってくれ』
 アンテウスが声をかけてくる、皆が台車造りに懸命に取り組んでいた。

第3章  踏み出す  101

2011-06-14 06:48:11 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アンテウスは、でっかい草の株の除去をアバスに指示した。
 『アバス、君にやってもらいたい仕事だ、頼むぞ。各隊から7人くらいづつ連れて、道の草の株を取り除いてほしい、台車を引くのに邪魔と思える、でっかいやつをだ。台車のクルマが転がりやすいように砦の浜までの道を整備してほしい。今からだと夕刻までに終わると思う。すぐ、取り掛かってほしい。この仕事が終わるまでお前の隊は俺が預かる。いいな』
 『判りました』
 『アミクス、リュウクス、俺たち全員で用材運搬の台車を造る仕事にかかる、台車の台数は各隊辺り、5~6台と言ったところだ。まず、これから台車用の材木を引き取りにいく。皆に集まるように言ってくれ。それから台車を造る場所だが、いま、俺たちがいるこの場所で仕事に取り掛かる。判ったか、皆が来たな、では行こう』
 集まっている者たちは材木の引き取りに向かった。彼らは総がかりで太くでっかい材木を台車を造る場に引きずって運んだ。
 『あ~あ、アミクス、砦から引いてきた2台の台車をここへ持ってきてくれ』
 アミクスは部下数人で仕事の場に台車を運んだ。アンテウスは、台車を皆に見るように言い、口を開いた。
 『お~い、皆、これを見るのだ。この台車を見本にして台車を造る。いいな。台車を造るのに、ここが聞きたいということがあったらアミクス、リュウクス、そして、この俺に遠慮せずに聞いてくれ、いいな。では、即、仕事にかかってくれ』
 皆は道具を手にして、勢いよく仕事にとりかかった。
 『ところで、アミクス、砦に使える台車が、まだあったか』
 『え~え、まだ、5~6台、西門の広場にありましたが』
 『そうか、それは助かる』 
 アンテウスは肯いた。

第3章  踏み出す  100

2011-06-13 06:39:51 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 三日前までは静かであった森が、昨日の用材伐りだしの者たちに運搬別働隊の150人余りが加わって、活気に満ちた賑わいから、一挙に騒々しくなった。
 200人余りの者たちが踏みならした道は、少しは歩きやすくなったとはいえ、大きなススキの株や草の株がところどころにあり、用材運搬の妨げになるのではないかと懸念された。
 アンテウスはオロンテスに相談を持ちかけた。
 『棟梁、でっかい草の株のことですが、あれは運搬の邪魔になります。草の根を取り除きたいのですが。隊から人員をさいてやりたいと思っています』
 『う~ん、なるほどな。台車の輪っぱの転がりの妨げになるか。いいだろう、お前の裁量の範囲だ。いいだろう、思うようにやれ』
 『判りました。各隊から7人、20人くらいで処理に当たります。また、用材運搬の台車を造るのに伐りだされた用材5~6本いただきたいのですが』
 『判った。少し時間がたったら、俺のところに20人余り引き連れてきてくれ』
 『判りました。では、、、』 と言って、アンテウスは持ち場に戻った。アンテウスは、アミクスら3人を呼び寄せて、オロンテスと打ち合わせた仕事を指示した。
 『判ったな、仕事を進めるについての質問はあるか』 彼は、三人と目線を合わせた。
 『ないようだな、よろしい。君たちに言っておく、怪我をしないように注意を怠るでないぞ。いいな、心して仕事に当たれ』
 彼は念を押した。

第3章  踏み出す  99

2011-06-10 06:38:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『そうか、お前もそのように思うか。俺もそのように思っている。そのうえ、用材の運搬、集積もそれに対応するということか、判った。それがいい、仕事を進めていくうえでそれが最もいい、そのようにしよう』
 オロンテスは、パリヌルスとオキテスに意向を伝えた。聞いた二人はオロンテスの言い分に呼応した。
 『オロンテス、判った。お前が考えていることが、この場合、舟艇の建造に最もいい配置だ、お前の言うとおりだ。今日、改めて、縄張りを整える。オロンテス、ほかに何か要望があるか』
 『組み立て場については、申し分ありません。では、よろしくお願いします』
 『判った。それから、部材の切り出し加工の鋸、かんな等、他の道具類についての手配はどのようになっているのかな』
 『はい、それについては、リュウクス、セレストスの二人に準備するように申しつけてあります。縄張りが終わり次第、二人に現場を引き渡していただければ結構です』
 『よし、判った。間違いなく手配りする』
 打ち合わせは終わった。一同は持ち場へと歩を向けた。
 エノスのはま、砦の浜ともに、好天に恵まれ、人々の日常がそこにあった。
 砦にいる人員の約半数の者たちが、舟艇の建造の仕事にたずさわることとなった。

第3章  踏み出す  98

2011-06-09 06:55:51 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アンテウスがオロンテスに報告に来た、アンテウスは、オロンテスを棟梁と呼んだ。
 『棟梁、あと小半刻で隊の編成が完了します。ところで運搬する用材の集積場所の指示がほしいのですが』
 『よしっ、判った。アミクス、リナウス、アバスの三人を連れて現場を見に行こう』
 オロンテスは、パリヌルス、オキテスと話し合い、砦の浜に縄張りをした作業場と舟艇の組み立て場の視認に浜へと向かった。
 『ギアスはまだか。まあ~、いいか』 と話しながら歩を運んだ。歩きながら縄張りの浜を見た。そこに二つの人影があった。
 ギアスがイリオネスに縄張りのことを説明しているらしい。オキテスが声をかけた。
 『パリヌルス、縄張りのところを見ろ。ギアスがいる、イリオネスが一緒だ』
 縄張りを視認に来た一同が、砂浜に念を入れて敷設された縄張りに目を見張った。それから、縄張りの説明を聞いているイリオネスに朝の挨拶をした。
 『おう、皆、おはよう。オロンテス、今日も用材伐りだしの森へ出向くのか。昨日。けが人が出たことは聞いている。伐りだしの作業は、はなはだ危険が多い充分に注意をしてほしい』
 『判りました』 と言って、パリヌルスに目を移した。
 『う~ん、なかなかいい具合です。アンテウスにアミクス、どうだ?』
 『まあ~、いいですね。しかし、舟艇の部材切り出し加工の作業場のことですが、舟艇の組み立て場が三箇所あります。組み立て場ひとつに部材の切り出し加工場がひとつほしいですね』
 アンテウスがやや遠慮がちにオロンテスに答えた。

第3章  踏み出す  97

2011-06-08 06:47:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 用材の伐りだしと運搬の作業がいい具合に進行していくようにパリヌルスは心を砕いていた。作業を責任担当している者たちも真剣に取り組んでいる、朝が来る、砦の一日が始まった。
 オロンテスが西門の広場の真ん中にどっかと腰をすえて、事の成り行きに目を配っていた。
 忙しく駆け抜け、走り回っている、命を受け、指示をしている者たち。パリヌルス、オキテス、アレテスらが姿を見せた。
 オロンテスは、このような喧騒の中に身をおき、そこに展開する風景を注意深く観察することがたまらなく好きであった。
 招集の指令を受けた者たちが集まってくる、彼ら別働隊の指揮を担当する者10人くらいが集まって話し合っていた。
 その中にオロンテスの右手と言われているアンテウスがいる、彼は、アミクス、リナウス、アバスの三人に指示していた。オロンテスの思いでは、この四人がこのあとも用材を製材し、舟艇の各部材を設計どうりに整え仕上げる作業を担当することになっている者たちであり、オロンテスの信任のあつき者たちであった。彼らが身につけている頭脳と技術はオロンテスの期待を裏切る事は決してありえないことであった。

第3章  踏み出す  96

2011-06-07 06:55:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ところで、相談なんですが。舟艇3艇と言えども、用材の量が考えていた量よりもかなり多いのです。運搬の別働隊を仕立てて事に当たりたいのですが』
 『なるほど、判った。それがいい。よしっ、明朝、アサイチで別働隊を編成して事に当たろう。何人くらいで編成するか、オロンテス、お前に腹案があるか、あるようであればそれを聞こう』
 『道中、考えてきました。一隊50名くらいで3隊、明、明後日の二日間で用材の伐りだしと運搬を終えたい。そのように算段しています』
 『オキテス、どう思う。俺はいいと思うのだが』
 『うん、いいではないか、それで事に当たったらいいと思う。ところでオロンテス、明日の朝、現場に向かう前に縄張りを見ていってほしい』
 話は決した。オロンテスは『判りました』と答え、打ち合わせをテキパキと済ませていった。
 『オロンテス、さあ~、休んでくれ。三人には、この旨伝えておく』
 アレテスら三人が広間に姿を見せた。
 『お~お、ご苦労、けが人はどうであった。明日、代わりを補充して、現場に行ってくれ。まあ~、こちらに掛けろ。いま、オロンテスとは、打ち合わせを終えた。明日に関する要件を伝えておく。伐りだした用材がかなりの量があると聞いた。そこで、オロンテスの案だが、運搬の別働隊を編成して事に当たるという考えだ。一隊50人で3隊、明日、明後日の二日間で、伐りだし、運搬の作業を終える。いいな。君たちから何か要望なり、用件があるようであれば聞こう』
 『そこまで話が進んでいるようでしたら、いま、私たちからは別にありません。以上です』
 『よし、ご苦労だった。身体を休ませろ。それから、ケガには充分に気をつけることだ』

第3章  踏み出す  95

2011-06-06 06:40:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 今日は、用材の伐りだしに出向いている者たちの帰りが遅れていた。彼らが砦に帰りついた頃は日はすでに暮れていた。オロンテス以下、一同をパリヌルスらが北門に出迎えた。
 『お~お、オロンテスご苦労、今日は遅かったな、何か不測のことでもあったのか。アレテス、ギアス、アカテス、お前たち、そして、一同ご苦労であった。お前らちょっと沈んでいるな、何かあったのか』
 『え~え、ちょっとの不注意から、けが人二名を出しました』
 アレテスが報告した。
 『判った。直ぐ手当てをしろ。皆は宿舎に返して休ませろ。アレテス、ギアス、アカテスの三人は用事を済ませたら広間の方へ来てくれ。オロンテス、行こう』
 四人は広間へと向かった。パリヌルスがオロンテスに言葉をかけた。
 『オロンテス、ご苦労であった。今日、俺たちは、お前が取り仕切る舟艇の部材加工切り出しの作業場と組み立て場の縄張りを終えた。明日の朝、見てくれればいい。それで聞くが、けが人の具合はどんなだ。何か要請なり、要望があったら言ってほしい』
 オキテスが言葉を継いだ。
 『けが人の具合なのだが、重症か』
 『たいしたことはないと思いますが、ひとりは、強い打撲を受けています。もうひとりの方は捻挫です。明日はけが人は休ませます。代わりの者を連れて行きます』
 オロンテスは、そこで一息入れて水を飲んだ。