『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  707

2016-02-02 05:55:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『統領、行きましょう』
 『おうっ!』
 一行は、スダヌスに導かれて集散所の小部屋に落ち着いた。
 改まるスダヌス、先ほどのスダヌスとは打って変わる態度であいさつをした。スダヌスがオキテスに話しかける。
 『オキテス殿、話の進行役を務めていただきたい。頼みます』
 『おう、心得た』
 五人の目がスダヌスを注視する。部屋うちの気が引き締まる。オキテスが口を開く。
 『スダヌス殿、先日の木片に書き記された数字と単位、そして、現行の貨幣制度から話していただければと考えています』
 『いいでしょう。する話は、ちょっぴり、こむつかしい話ですが、皆さん、そう硬くならずに座談風に話を進めていきましょうや。硬い話し方は、私の得意としないところです。いいですかな、統領、軍団長、そして、三人の皆さん、体から力を抜いてください。笑いながら話を進めてまいりましょうや』
 彼は、話しながら上着のポケットに手を突っ込んで、持ってきた数個の銀貨を取り出す、3個の銀貨を手からこぼす。
 『オットット!』
 銀貨のひとつが、アヱネアスのつま先あたりに転がり落ちて止まる。身を屈める二人、頭が衝突する、スダヌスが銀貨を拾い上げる、目を合わせて笑いを交わした。
 『ハッハッハ!』『ハッハッハ!』
 スダヌスが拾い上げた銀貨がアヱネアスに手渡された。
 イリオネスとオロンテスが転がっている二つの銀貨を拾い上げて見つめた。パリヌルスとオキテスには、スダヌスが手に持っている銀貨が手渡された。
 スダヌスが演じたこの所作が場の空気を和ませた。
 『ではでは、この銀貨についての話から行きますか』
 彼は、一同と目を合わせた。
 『この銀貨は、ギリシア本土のコリントスで発行されていtる銀貨です。アテネでは通貨の造幣が計画されているらしいのですが、まだ、公式には発行されてはいません。いま、交易の場で広く使用されている通貨で、一番信用されている通貨です。アテネにおいても使用されている通貨です。当然、このクレタでもこの通貨が使われています』
 スダヌスは、ここまで話して間を持った。
 『この銀貨の通貨価値は、2ドラクマで通用しています』
 スダヌスの話を聞いている五人は、しげしげと手にしている銀貨を眺めた。
 アヱネアスもイリオネスも、この銀貨については知っている、詳しく知っていないのはパリヌルスら三人であった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  706

2016-02-01 05:34:22 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 艇上の者たちが感極まっている、オキテスが言葉を吐く。
 『パリヌルス!これはどういうことだ?ヘルメスのこの変貌!俺はいま、このヘルメスに大驚きでいる』
 『そうか、お前が驚くとはな。新艇構想の完了だ。話はあとからだ、いいな!』
 二人は、互いにうなずいた。
 アヱネアスが話しかける、イリオネスも話しかけてくる。
 『おい!パリッ!山行の時のヘルメスとは、全く変わった!俺のオドロキ、ちょっとやそこらではない。この容姿、天空を駆けてもサマになる』
 『統領、それは話の飛びすぎです』
 イリオネスが話の間に割って入ってくる。
 『パリヌルス、やったな!この装備、この構造、この走り、そして、ヘルメスのスガタカタチ、申し分がない。見事だ。新艇構想の完結だな。お前の言うとおりだ。ようやった!』
 ヘルメスは、快調に航走して、キドニアの船だまりに着いた。
 オキテスは、スダヌスのところへと足を向ける、統領らは、オロンテスと売り場のスタッフたちと集散所のパン売り場へと向かった。 パリヌルスは、ギアスと今日の試乗会の打ち合わせをする。
 『パリヌルス隊長、一同、驚いていましたね。この私も往路のヘルメスに新しい走りを感じました。今日の試乗会、上首尾で終えるように努めます』
 『おう、よろしく頼む。今日の俺は、会合を欠かすことができない。結果については、あとから聞く、以上だ』
 『忘れるところでした。隊長、オロンテス隊長に伝えてください。集散所の新艇担当の人に今日の試乗会に同行してくれるように伝えてくれとひと言、言ってください』
 『おう、判った』
 打ち合わせを終えたパリヌルスは、集散所へと足を運んだ。
 スダヌスは一行の到着を待っていた。オキテスの姿を見とめて駆け寄ってくる。
 『おう、オキテス殿、ようこそ、ようこそ。して、統領らは?』
 『おう、スダヌス浜頭、待たせたのかな?彼らはパン売り場にいる。俺ら五人、今日は、浜頭からいろいろ教わる日だ。何卒宜しく』
 『それでは、行きましょう』
 二人は並んで歩み始める、スダヌスが、アヱネアスとイリオネスの姿を見て、小走りで寄っていく、そのスダヌスに気が付くアヱネアス、二人は、ガシッと、互いの肩を抱いた。
 『元気でしたか?統領!』
 『おう、この通りだ。浜頭、元気だったか?』
 『はい!この通りでーーー』
 スダヌスは声を詰まらせた。