イギリス湖水地方のホテルのシャンデリア
私が物心ついた後の総理大臣の中で、すぐにパッと正しくフルネームを言えるのは佐藤栄作に田中角栄、今の野田首相なんて下の名前はなんやった?
初めて選挙権を持ったころ、自民党の幹事長が田中角栄、共産党の書記長が不破、公明党が矢野、社会党が…むむっ忘れた。民社党が同じく忘れた。
このころ、政党討論会がやけに面白くて、選挙になると熱心にテレビを見ていた。
良くも悪くも昭和の人、田中角栄。
写真を見ると、けっこう男前かも。
その角栄の秘書であり、後援会「越山会」の金庫番であり、愛人であった佐藤昭(あき)のことを、2人の娘であるあつ子が母子の葛藤を軸に書いている。
こんなにおおっぴらに愛人をそばに置き、子どもまで作って、今の時代なら大スキャンダルで政治家やってるどころでないと思うが、「女を作るのは男の甲斐性」みたいに、昭和の頃は珍しくなかったんだろう。
角栄は同じころ、神楽坂の芸者にも子どもを2人産ませている。
しかし、角栄も昭も情に厚くて、人マメとはいうものの、めちゃくちゃ暑苦しい人間である。
こんな家庭環境なら、そら、子どもも鬱屈する。
愛人の子であっても、今太閤の子(認知はされていない)、子どもの頃から服は一流デパートの誂えで、スキーがしたいといえば、越後湯沢のホテルニューオータニで専属インストラクター付etc.
子どもへの手土産はいつも切手シート(昭和40年前後は空前の切手ブームだった)、角栄が郵政大臣していたからというオチも笑える。
家族の食事は甘辛過ぎるすき焼き。
キラ星のごとく居並ぶ若き政治家(小沢一郎も)に囲まれた昭の写真を見ると、ちょっと可笑しい。
昭和初期生まれの人間って、みんな五頭身くらいしかない。
この半世紀でホンマに日本人の体格が良くなり足が長くなったのね。
角栄は外遊に出る度に、娘のあつ子にこまめにはがきを送ってきたそうだ。
そして、佐藤昭に出した原稿用紙にびっしり書き込めた真摯なラブレターも残されている。
マメじゃないと、どぎついバイタリーがないと、恋愛なんて政治なんてやってられへんなぁ。
今の草食男子にはどだい無理かも…だけど、強すぎるカリスマ性は右向け右!になるから、それも怖い。
『昭 田中角栄と生きた女』 佐藤あつ子 講談社