メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

それでも恋するバルセロナ

2009-06-30 22:20:31 | 映画
「それでも恋するバルセロナ」(2008西米、96分)
監督・脚本:ウディ・アレン
ハビエル・バルデム、スカーレット・ヨハンソン、レベッカ・ホール、ペネロペ・クルス
 
マッチポイント」(2005)、「タロットカード殺人事件」(2006)と、肩の力が抜けて快調になってきたウディ・アレン、しかもこの2つに続いて今回もスカーレット・ヨハンソンを起用、彼女もさるものであまり意識せず演じているからうまくいくのだろう。ジュリア・ロバーツなんかのときはこうはいかなかった。
 
休暇でバルセロナに知り合いを訪ねて一緒に行った対照的な2人(ホールとヨハンソンン)、女たらしの画家(バルデム)と順に出来てしまって、さてどうなるか、そうこうしているうちに画家が手を焼いて別れた元女房(クルス)が激しい調子で割り込んでくる。
 
仲が悪い一方でもない変な四角関係で、バルセロナという環境もあるのか、とげとげしくはならない。
 
まず最初は、早い場面展開に2人の女の説明をナレーションでいれ、観客に基本的な理解を植え付ける。最近ときどき見かける手法だが、映画全体がだらだら長くなるよりはいい。それに、登場人物も少なく、舞台のような進行、演出でもあって、この手法はそれによくあっている。
 
ただ、見ていてちょっと難しくなってくるのは、こういう恋のエピソードが深刻にならずに続くのはいいのだけれど、「マッチポイント」、「タロットカード殺人事件」などでは、ある種の幸運もあって一つの恋が成就し大団円、見ている方のカタルシスになったところが、今回はそうでもなく、これはひと夏のバルセロナの恋となり、また人生は続いていく。
 
そんなに人生は劇的に動いてはいかない、それでも時には心のおもむくままに、一時の恋に走ってみてもいいのではありませんか、ということか。そう、モラリストの映画にならなかったのは、バルセロナの力が効いていたのか、俳優がそれに適っていたのか。
 
そのあたりの演出のスピード感がもう少しあったら、というところ。
 
ハビエル・バルデム、スカーレット・ヨハンソンはまずまず。レベッカ・ホールはなかなか殻を破れないちょっと硬いという設定ではあるが、映画なんだから「フロストxニクソン」のように、もう少しはじけていてもよかったのではないか。
 
ペネロペ・クルスがこれでオスカー(助演)。確かにうまいが、ほとんどスペイン語の場面ということもあって、力が入りすぎているようにも見えた。もっともこの人、「バニラ・スカイ」などと同様、脚本を選ぶ、呼び込む才能があるのかもしれない。
 
音楽は数曲が繰り返し効果的に使われている。冒頭から出てくる「バルセロナ」は印象的、そしてアルベニスの「グラナダ」は最初有名すぎて使うのはちょっとと思っていたが、何度か出てくるうちにフィットしてきた。このあたりはアレンの趣味かどうかわからないが、さすが。

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