メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

マン・レイ展

2010-09-06 17:40:48 | 美術

マン・レイ展 知られざる創作の秘密
2010年7月14日(水)-9月13日(月)、国立新美術館
Unconcerned But Not Indifferent (無頓着、しかし無関心ではない)
 
マン・レイ(Man Ray) (1890-1976)について、名前のほかはあまり知らなくて、写真家というイメージを持っていた。こうしてみる、写真について多くの仕事はしているものの、写真家とは言えないようだ。
ニューヨーク、パリ、戦争を逃れてロサンゼルス、そして再度パリという活動拠点の変遷にあわせて展示されている400点あまりの作品は、多様なジャンル、形式、様式で、写真の対象(モデル、作品)をはじめとして、20世紀のアートにおける実に多くの人たちとの交流が表現されている。

一つ一つの作品は、たとえばウォーホルや交流のあったピカビアのものなどと比べてもそうインパクトはない。
 
アーチストたちが撮られている写真は確かに面白い。なぜか横向きのポーズが多いけれど。
 
そして、彼は他人の作品を写真にとるばかりでなく、自分の作品も写真とともに記録し、検索カードのようなものを作り続けていたようで、会場にはその一部の複製があり、手に取って見ることができる。
ロスアンゼルス時代には、評価も定まりよく売れるようになったからでもあろうが、自作のリトグラフを多く作っていて、多くのコピーが世に出れば、自作のオリジナルはなくなってもいいという極論を吐いたこともあったという。
 
つまり、自分の周りに現れた様々なアート、その中で自分が創ったもの、それらを自分の目の届くところに常に置き続け、そうしてまた何か作っていく、そういう創作スタイルになっていったのではないか。最初から意識的かどうかは別として。

アート・シーンを感じながら、参加しながら、その中で泳ぎ続ける?

写真というものがそういうことを可能にする技術、媒体として位置づけられてきたということも確かだ。その後、写真に加えて様々なものが出現し、いまやすべてデジタルデータ化、データベース化が可能になり、それをネットワーク上に出すことも可能、となってみれば、このマン・レイの始めたこと、というのは何か大きな意味を持っている。先駆性とは言えないが。
 
感動というほどではなくても、一度見ておくといい展覧会。


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