メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ハル・デヴィッド(作詞家)死去

2012-09-03 15:24:00 | 音楽一般

ハル・デヴィッド (Hal David)が亡くなったということを、朝刊の訃報欄で知った。

91歳だそうで、一緒に歌を作ったバート・バカラック(作曲家)は84歳、思ったより歳が離れていたようだ。そういえば私が歌を習うようになって手に入れた二人のソングブックの表紙写真を見ると、風貌にそれなりの歳の差がある。

 

20世紀後半、シンガー・ソングライターあるいはそのグループが多くなってきて彼らを除くと多くの傑作を生みだした作詞家といえばこのハル・デヴィッドそしてキャロル・キングとコンビだったジェリー・ゴフィンくらいだろうか。

 

上述のように習いだしてからデヴィッド/バカラックの歌を何曲か歌ってみると、よくこんなと思うほど広いところから表現を採ってきていて、バカラックの凝った作曲とともに、歌として挑戦しがいがあるものが多い。

 

カヴァーしている人たちも、ディオンヌ・ワーウィックやカーペンターズからジャズ系の人たちまで多彩である。

 

最初の頃、この二人の映画サウンド・トラックで「カジノ・ロワイヤル」、「明日に向かって撃て!」はあまりにも有名だが、その後の映画で既存の曲、演奏をセレクトして使うことが多くなってからも、彼らの作品はよく使われている。中でも「ベスト・フレンズ・ウェディング」(ジュリア・ロバーツ、キャメロン・ディアス)は素敵(「小さな願い(I say a little prayer)」など)。

 

あと一曲、「何かいいことないか子猫ちゃん」で使われた同名主題歌 What's New Pussycat は、デヴィッド/バカラック「よくも書いたり」だし、この人しかこういう下品で粋にはできないトム・ジョーンズの歌唱、よく思い浮かぶし、大好きである。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

充たされざる者(カズオ・イシグロ)

2012-09-03 12:12:53 | 本と雑誌

カズオ・イシグロ著 「充たされざる者」

(The Unconsoled  1995)  古賀林幸訳 ハヤカワ文庫

 

この作品、最近まで知らなかった。「浮世の画家」と「わたしたちが孤児だったころ」の間に書かれたもののようで(1997年に単行本で翻訳刊行)、しかも文庫で900頁を超える大作である。

 

読み切れたことは読み切れたが、やはり長い、というのが率直な感想。

登場人物の名前などから、おそらくドイツ東部から中欧あたりの地方の中心都市、そこに著名なピアニストである主人公が演奏会を中心とするイベントに招かれ、物語は彼の人称で語られていく。ところが、手筈がちぐはぐて、うまく話が通っていなかったりで、目的を達成できるのか、読んでいても不安になってくる。そこを打開すべく主人公は質問したり、行動したりしようとするのであるが、なぜかタイミングも悪く、違った方向へと動いていって、思い切って「要するにどうなんだ?」ということもまだひかえながら進んでいくから、読む方もいらいらしてくる。カフカの「城」を連想させるが、それは作者も織り込みずみだろう。

 

知らない街に来たと思いきや、どうもピアニストが今一緒だが問題を抱えている女性とその連れ子がここにいて、その関係者や、ここにいついて落ちぶれているかっての著名指揮者などが登場、うまくいかない話が続くうち、登場人物も読者より遅れて不満を募らせ爆発させていく。

 

どう考えても2日くらいの話のはずだが、もっと詰め込みすぎているようだし、よくわからない場面転換や作者の確信犯的ルール違反もあるように受け取った。もう読むのやめようかとおもっていて、なんとか読めてしまうのも作者の実験的手法なんだろうか。

 

ここからあと「わたしを離さないで」まで、SF的な世界は続いている。

 

実験的な意味はあっても、次作「わたしたちが孤児だったころ」のような感動的な最後は待っていなくて、人生こんなもの、、、という感じ。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする