こわれゆく女 (A Woman Under The Influence 、1974米、145分)
監督・脚本:ジョン・カサヴェテス
ピーター・フォーク、ジーナ・ローランズ
この映画、日本で公開されたのは1993年、カサヴェテスが1989年になくなってからさらにしばらくだったようだが、これを見ると、ほかのアメリカ映画ってなんなの?という感がしてしまう。
夫(ピーター・フォーク)は地方の町の水道工事人で責任もあり職場で尊敬されている。妻(ジーナ・ローランズ)との間に幼い3人の子供がいる。あるとき事故で急遽仕事が長く徹夜になり、家族との約束を果たせなくなる。その朝、仕事で疲れた同僚たちを家に呼んで食事をさせてあげようと集まったあたりから、徐々に妻の様子がおかしくなり、その後ついに治療施設にいくはめになる。夫はいい家庭人で子供たちにいやな目を味あわせないよう懸命に努力をし、半年後には妻が帰ってくることになる。そこでまた彼らの親と友人を集めてパーティをすることにするのだが、さてどうなるか。
最初から、登場人物たちにカメラがよりそい、事件現場みたいな撮り方で見るものを引き込んでいく。セットでなくおそらくすべてロケではないだろうか。日本の監督も含め、この撮り方にはかなり影響を受けたたのではないかと思う。
この社会、家族、こうしてみるとこの国では、真面目になればなるほど一つ一つ言葉で人工的に関係を作り上げていかなければならない。これは相当しんどいことだろう。そして関係がタイトであればあるほど、なかなかうまくいかず破綻しがちになる。
妻が帰ってきて、最後になんとかなりそうになるのは、子供たちが持っている「自然」が一つのきっかけになっているように思われる。それになにしろ3人もいると夫ひとりではコントロールしきれないのだから(手は二つしかない)。この子供たち、どうやって演技させたのか?
ピーター・フォーク、このときはもう「コロンボ」で忙しかったが、カサヴェテスとは親友でいくつか彼の作品に出ているようだ(知らなかった)。人の好さ、頼もしさ、それゆえのいらいら感を見事に出している。
そしてジーナ・ローランズ、こうしてこわれていく女を演じると賞などにノミネートされやすいし、事実そうだったようだが、そういうレベルを超えている。こわれていても、何かチャーミングだし、あの美貌だからセクシーだし。
カサヴェテス/ローランズ夫妻の作品では「グロリア」(1980)しか見ていなかった。もちろんこれは娯楽映画としても傑作で、ここでのローランズはとにかくかっこいいとしかいいようがない。
これからこのコンビの映画、もう少し見てみようと思っている。