練馬区立美術館 2013年4月14日~6月2日
牧野邦夫(1925-1986)については、「美の巨人たち」(テレビ東京)を4月に見るまで知らなかった。現代のそれも写実ということから、その名前を目にする機会がなかったのかもしれない。
もっとも練馬区立美術館は2011年に礒江毅展をやっていて、これは極端に写実を極めたものであった。
牧野は写実絵画のありかたとしてドラクロワ以前の西洋絵画における写実を手本としたいと自ら述べていて、中でもレンブラントに対する思いは強い。それはここで多くの点数を見ても感じられる。
自画像、裸婦、そして何か物語を描いたようなものが多い。写実の果ての幻想といったところが多いのは、「千一夜物語」の挿絵を描いたあるいはそういうところがもともとあったのか、何かあるのだろう。自画像などは岸田劉生の、また物語の系列は青木繁など明治の画家に連なるように見えなくもない。
そうなると、高島野十郎や礒江毅のようには、はっきりとした牧野の写実というものが出てくるところまでは行かなかったのかもしれない。
自画像は画家自身がすっきりとした二枚目の顔をしていることもあってか、何かこちらから対峙しにくいところもある。
裸婦は力強い調子のものが多く、これは日本の洋画としてもなかなかユニークなものだ。
幻想的なもの、物語性のものを合わせると、こうした展示では見ていて焦点を結びにくいところがある。それで悪いというわけではない。
もう少し生きていれば、横尾忠則とかフラットな方向にいってもおかしくないような題材、テーマにも思えるのだが。
とはいえ、こうして写実の系列の画家たちを多く見ることができるのは、なかなか面白いものである。