Bunkamura ザ・ミュージアム 2013年4月27日-6月16日
アントニオ・ロペス(1936 ~)の名前を知ったのはこの展覧会が開催されてからである。日本で作品がまとめて展示されるのは初めてだそうだ。
スペイン・リアリズム(写実主義)の代表的な画家と言われているから、以前取り上げた礒江毅が目標としスペインに行って学びついにそのジャンルで評価を得たあの「写実」を想像したが、やはりずいぶん違うものだな、というのが感想である。
本人も言っているように、描く対象が第一で、写実の技法はそれについてくる。したがって時間的に、また空間的に、一見不思議な、しかしよく見ていると納得することもある絵が現れる。
有名な「グラン・ビア」はマドリードのある街かどで朝の同じ短い時間帯に見たものを何年もかかって描いたもので、時間の層があるはずだが、そういわれればということもあるだろうし、評価は難しい。
風景特に上から見たものは、いくつかの視点、視角特に人間の眼よりは相当の広角でとらえたものもあり、見ていて飽きない。
植物、花の絵も写実というより、対象に吸い込まれそうなところがある。
それでも、基本となるリアルなデッサンの腕は大変なもので、自分の娘を描いた「マリアの肖像」など、顔の部分ももちろんいいけれど、来ている無地のオーバーの材質、風合いなど、鉛筆だけで描いたものとしては驚異である。鉛筆だけで描いた絵の威力は他の画家のもので驚かされてはいるのだが、この人の使いこなし方は特別である。