メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

桑原あい 響楽 クラシックホールの陣 2016 冬の陣

2016-12-08 14:55:39 | 音楽
桑原あい 響楽 クラシックホールの陣 2016 冬の陣 
12月7日(水)サントリーホール・ブルーローズ(小ホール)
ピアノ:桑原あい ヴァイオリン:須藤杏 島内晶子:ヴィオラ 林田順平(チェロ)電気ベース:森田悠介
 
桑原あいのピアノ、ライブでは昨年12月の同じ編成によるものから聴き始めて4回目、若いころからよく行っていたコンサートはクラシックだから、同じ演奏家にこういうことはなかった。
2月のトリオ(新宿ピットイン)7月のソロコンサートと、すべて編成が大きくことなっている。したがって、この人のピアノの特徴をそういうなかで、それでもどうか、という形でつかみ味わうことができるということ、そして多様な編成で彼女の作曲・編曲能力が発揮されるのを聴く、という期待と楽しみがあった。
 
それまでのCDとことなり、こういう流れの中で、同じ曲名がいくつも出てきているけれど、ずいぶん違うところと、前よりこなれてきて、熟成されてきていて、こちらにもより印象強くなってきた、という感がある。
 
最初の919/Betweenと最後のThe Backは彼女のテーマになってきたようで、919の始まりのきしむ弦はバルトークを想起したし、The Backは聴いているこちらも、あっこれは少し覚えているなという感じから途切れなく入っていけて、しかもこの真摯な想いと決意の作品でピアノがよく歌っているのは見事。
 
またSomewhere(ウェストサイド・ストーリー)の歌いかたも回を重ねるごとに、完成度が高くなってきた。
二人の姉(ゆう、まこ)と彼女自身によるいくつかのアレンジは一人一人の弦が明確に聴こえ(PAなし)、それを聴きながらのピアノとともに、全体として高い完成度だった。また少し体力もついてきたようだ。
 
考えてみれば、かなりの歳になる最近まで、ジャズはそうのめり込んで聴いてなかった。だから、いわゆるビバップを中心とするるモダンジャズについてそうこだわった見解も思いもない。その一方、クラシック延長で出てきたいわゆる現代音楽は、若いころからそこそこ聴いていて、多少の理解、好みはある。そういう背景で桑原あいのピアノを聴けているというのは幸運なのかもしれない。
ともかく、この歳まで生きてきて聴くことができたのはよかった。

セットリスト
1. 919 / Between - Ai Kuwabara
2. Tell Me A Bed Time Story - Herbie Hancock
3. Somewhere - Leonard Bernstein
4. Riverdance - Bill Whelan (strings arranged by Mako Kuwabara)
5. September Second - Michel Petrucciani
6. B minor waltz - Bill Evans (arranged by Yu Kuwabara)
7. Boléro - Maurice Ravel (arranged by Yu Kuwabara)
8. I've Seen It All - Bjork
9. 響楽Insomnia - Yusuke Morita
10. Somehow It's Been A Rough Day - Ai Kuwabara
11. The Back - Ai Kuwabara
enc. Take The A Train(Duke Ellington) etc.





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油井正一「生きているジャズ史」

2016-12-08 10:37:27 | 本と雑誌
生きているジャズ史:油井正一著 立東舎文庫 2016年9月
 
ジャズ評論家油井正一(1918-1998)の書いたものは若いころからそれなりに読んでいたが、この長期間の論集を読むと、イメージも変わってくる。この人の文章を読んでいたといてもお多くはクラシック音楽中心の「レコード芸術」で、著者と野口久光あたりが中心、話題のレコードの紹介だったように記憶している。
 
本書は、それらとは違って、ジャズの起源、発生かアメリカ南部、シカゴ、ニューヨーク、ウェストコーストと広がっていくあたり、それも禁酒法時代をはさんで、という流れがよくわかってありがたかった。
いわゆるビバップに至るそしてその前後の過程で、今もよく聴かれるモダンジャズの名演奏、奏者が生まれ、その後マイルス・デイヴィスの「ビッチェズ・ブリュー」に至るところまで。
 
著者の世代からすると意外にも「ビッチェズ・ブリュー」の評価は高く、画期的というものである。また聴いてみよう。
私のように、モダンジャズをリアルタイムに真剣に聴
 
ただ、ビバップについてはもう少し音楽的にわかりやすい説明がほしいのだが、これは故人にいってもいたしかたないこと。
おもしろいのは、ある時期までの話し方(文体)が軟派の講談調みないなことで、これは意外。それも韜晦ではなく、著者の育ち、趣味をそのまま出したもののようである。今なら問題とされる言葉づかいがそのまま収録されているのもいい。
 
私がデジタルアーカイブの仕事をしているとき、つきあいのあった慶應義塾アートセンターの「油井正一アーカイブ」プロジェクトは、相当なもんだといわれていたが、こうして本書を読むとなるほどと思う。

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