メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

サン=サーンス 「サムソンとデリラ」

2021-01-11 17:50:00 | 音楽
サン=サーンス:歌劇「サムソンとデリラ」
指揮:マーク・エルダー、演出:ダルコ・レズニヤック、フランス語
エリーナ・ガランチャ(デリラ)、ロベルト・アラーニャ(サムソン)、ロラン・ナウリ
2018年10月20日 ニューヨーク・メトロポリタン 2019年12月 WOWOW
 
有名なオペラだが初めて見ることができた。サン=サーンスに対する漠然としたイメージからするとかなり骨太で豪壮な音楽である。もっともオルガン付きの交響曲あたりと通じるところはあるようだし、すぐに却下したとはいえ最初はオラトリオという構想もあったらしいから、作曲の源泉にはそういう感じがあったのかもしれない。
 
旧約聖書時代のガザ、ペリシテ人に支配されていたヘブライ人のサムソンが反乱を起こす。ペリシテ人のデリラはその美貌でサムソンを誘惑し、その力の秘密を聴きだそうとする。
第2幕の愛の二重唱が見せ場、二人はお互い政治的な策謀を秘めて愛し合うが、同時に自らも相手もどこまで?という疑問を抱きながらの場面。
 
幕間のインタビューでガランチャが語っているようにここはメゾ・ソプラノの国歌ともいうべきものらしい。メゾは男役のズボンも多いから今回の衣装はうれしいともいう。
 
ガランチャはその美貌と役にぴったりの体のスタイル、そして強さのある官能的な歌唱、たっぷり見せ、聴かせてくれる。
10年近く前に彼女があのセクシーな「カルメン」を演じた時、今回と同様に翻弄される役(ホセ)はアラーニャだった。彼も声の強さが感じられるようになったけれども、風貌のバランスからするともう少し若い人でもよかったように思う。
 
エルダーの指揮は歌唱によく寄り添い、歌い手をうまくリードしていた。
 
舞台、衣装はかなり現代の要素が入っているが、レズニヤックの演出はむしろこれらもうまく使って、本質的な筋に観るものを集中させることに成功していると思う。
 
終幕は何かよくわからないところもあるのだが、捕らえられもうだめか思われたサムソンの神への訴えで逆転したか?というところで終わる。どうもこういうのを観ると、19世紀西欧、やはりヘブライ人の側に立たないといけなかったのか、という思ってしまう。


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