メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

綿矢りさ「嫌いなら呼ぶなよ」

2022-08-25 15:55:10 | 本と雑誌
嫌いなら呼ぶなよ : 綿矢りさ 著  河出書房新社 2022年
 
四つの短中編からなっていて、全体に今つまりコロナ禍、SNSの時代に、20~40くらいの男女が整形、;ネット上の交錯、不倫、そして出版プロセスなどの話で、今そうなのかという興味をもって読ませる。
 
いずれもちょっと性格の悪いというか、あんまりつきあいたくない感じの人たち、小悪人たちで、このくらいの長さで、面白く進行させているから読めるといったところである。
 
読み終わった後何か教訓だったり、真実だったり、そういうものを、結末として受け取るということはないけれど、四つ共通してあるのは、登場人物特に主人公の自己肯定感で、きれいな感じではないけれど、これからも生きていくだろうなと思わせるところ。
 
著者の名前は十代でデビューし賞をとったころから知っていたが、読んだのは今回が初めて。タイトルのつけ方が面白いなとは思っていた。実は少し前に本書刊行にあわせた新聞インタビューを読んで内容に興味と持ったのと、こういう時期にそれを書くことが大事と言っていたことで、そういえばはるか昔、100年前にスペイン風邪、関東大震災などの時代、それを背景にした;文学はあったかもしれないが、私は読んでいない。若い天才画家何人も死んでいるのに。
 
出版をめぐる作家、インタビュア、編集者三つ巴のメールによるバトル、作家の名前が綿矢りさ本人となっていて、これは禁じ手か? そういう人なの? むしろ反対?と思わせて、さてどうなのか、やってしまう思い切り、むしろ好きになった。
 
こういう短編、最近読んでないが芥川龍之介あたりが著者の念頭にあるのだろう。ここにある一つで、主人公が推す男のネットアイドルの名前がまさにカンダタ(蜘蛛の糸)。
またいくつか読んでみようと思っている。


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