メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ワーグナー「神々のたそがれ」(バイロイト2022)

2022-10-13 13:47:33 | 音楽一般
ワーグナー:楽劇「神々のたそがれ」
指揮:コルネリウス・マイスター、演出:ヴァレンティン・シュヴァルツ
クレイ・ヒリー(ジークフリート)、イレーネ・テオリン(ブリュンヒルデ)、アルベルト・ドーネン(ハーゲン)、ミヒャエル・クプファーーラデッキー(グンター)、エリザベス・ティーゲ(グートルーネ)、クリスタ・マイアー(ワルトラウテ)、オラファ-・ジグルダルソン(アルベリッヒ)
2022年8月5日 バイロイト音楽祭  2022年9月 NHK BSP
 
「神々のたそがれ」を映像で見るのは久しぶり、おそらくメトロポリタン(ルイージ)、スカラ(バレンボイム)以来だろう。
 
今回のたそがれ、登場人物の服装、風貌、背景、装置など随分現代風、それもかなりカジュアルで安っぽい感じもある。ただ、ワーグナー上演の中心的存在と見られるバイロイトといっても、こういう変わった演出は珍しくなかったと思う。
 
なかでも「指輪」はリングではなくジークフリートとブリュンヒルデの「愛の結晶」というわけか子供になっていて、劇の展開に沿って声はださないまま登場人物に扱われていく。場面によってはヴィジュアルというより意味上からも無理があった。こればかりではないが、全体として充実していた歌唱、オケとあまりにレベルが違っていたということなのか、カーテンコールでシュヴァルツ(演出)はすごい「ブー」を浴びていた。
 
ブリュンヒルデのテオリンは優れていて、本作の中心はブリュンヒルデだからこれはよかった。ジークフリートのヒリーはピンチヒッターらしいが、まずまず。
 
ギービッヒ家のグンター、グートルーネはチャラチャラしていたがこれは演出上の注文だろうか。まあ悪だくみの中心である弟ハーゲンはすごみも出していた。もう少し深さがあってもとは思うけれど。なぜならこの一族の怨念、執念は父アルベリッヒから来ているわけだが、今回観てみてアルベリッヒの登場はそんなに長くないからである。
 
視覚的なところはどうもといった感じだから、どっちかといえば音楽の方に注意しながら、4作の最後に位置する本作までの経過を思い出しながらいろいろ考えてみた。
 
もうウォータンは死んでしまい、当初の神々の世界を知ってここまで来たのはブリュンヒルデ、アルベリッヒ、そしてブリュンヒルデの妹ワルトラウテ(二人はワルキューレ)、あとはラインの乙女たち、ノルンたちである。
 
ウォータンが目指した神々の栄華を実現するはずの黄金をアルベリッヒ争い、ブリュンヒルデは父ウォータンに逆らったり、罰せられたりしながら、ジークフリートを送り出し、ジークフリートはノートゥング’(剣)と指輪を得、今度はブリュンヒルデと愛を交わしたわけだが、最後、アルベリッヒの子孫たる強欲な俗物ハーゲンたちに貶められる。
 
これで終わりではしょうがないから、ブリュンヒルデは火をはなちすべてをかかえてラインに帰っていく。指輪(黄金)はラインの乙女たちに返っていく。
 
なんだかこれより汚い格好だが、ドイツ帝国の終末のようにも見える。ドイツばかりでないかもしれない。
 
指揮のコルネリウスはもう少し拍手があってもよかったと思うし、オケは優れていた。もうこれだけ年月が経つと、世界から集めたメンバーの水準は昔より高いのだろう。
 


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