メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

コルンゴルト 「死の都」

2021-07-05 16:18:05 | 音楽一般
コルンゴルト:歌劇「死の都」
指揮:キリル・ペトレンコ、演出:サイモン・ストーン
ヨナス・カウフマン(パウル)、マルリス・ペーターセン(マリエッタ/マリーの幻影)
2019年12月1.6日 バイエルン国立歌劇場  2021年6月 NHK BSP
 
コルンゴルト(1897-1957)23歳の作品、高い評価を得たオペラである。コルンゴルトの作品としては比較的よく演奏されるヴァイオリン協奏曲くらいしか知らなかったが、「死の都」もかなり上演されているらしい(日本でも)。この人、大戦を境に米国に亡命し、映画音楽で活躍、後の作曲家に大きな影響を与えたそうである。
 
原作はベルギーの詩人ローテンバックの「死の都ブリュージュ。これをベースに結末などいくつか翻案しているらしい。ブリュージュが過去の都であるように、主人公パウルは愛した妻マリーの死後も自宅を「在りし者の教会」と名付け、マリーの使っていたもの、洋服から鬘まで残してあり、おびただしい写真を貼り巡らしている。
 
その後パウルはマリエッタという女に出会う。彼女はマリーとうり二つで、好きになるが、自宅には連れてこない。マリエッタは劇団にいて、積極的だし、仲間たちと煽情的な騒ぎをよくしている。マリエッタはパウルがマリーの幻影を求めて自分と付き合っていることに気づき、最後はパウルの自宅に乗り込む。さて二人は殺し合い、自殺?と思わせるのだが、最後は死者を悼んでも、自らの生を、「生と死は分かたれるべき」と結ばれる。
 
作られたのが第一次世界大戦の直後だから、これは大きな意味を持つものだったと思われる。一方でそれまでのヨーロッパの過去に対する喪失感から、そうはいかない人たちもいただろう。ツヴァイク「昨日の世界」など?
 
音楽は聴いていてリヒャルト・シュトラウスを思わせる。きれいなところと、衝撃的なところ、いずれもオペラとしては聴いていて飽きさせない展開である。
 
主役の二人カウフマンとペーターセンは力のいる歌唱と、動きで出ずっぱりであり、これを演じることができる歌手はそう多くはないだろう。
演出は箱型の部屋の組み合わせを使い、回転舞台を使って円滑な場面展開をしている、近年よくあるものだが、照明との組み合わせがよく、効果的である。
 
指揮のペトレンコは、鋭さ、柔軟性、的確である。あまり最近の人に詳しくないこともあってか、1~2年前に突然ベルリンフィルの首席として名前をきいたとき、はてと思ったくらい。このバイエルン国立歌劇場ではもう少し前から実績があるらしい。今後新鮮な活躍を見せてくれそうだ。

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