メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

プッチーニ「外套」

2022-12-26 21:12:49 | 音楽一般
プッチーニ:歌劇「外套」
ロマン・ブルデンコ(ミケーレ)、アスミク・グリゴリアン(ジョルジェッタ)、ジョシュア・ゲレーロ(ルイージ)
 
さて二番目は「外套」である。アスミク・グリゴリアンはここでかなり年上の運搬船船長の妻になっている。二人と若い船員、その三人のおよそは予想通りの展開となるドラマ。
プッチーニはヴェリスモ世界の一人とも言えるから、これは「ジャンニ・スキッキ」よりすんなり入っていく。
 
ただしそこはプッチーニで、なんともやりきれない感じで終始するわけではなく、周囲の人たち、その音楽など、なかなか聴かせるところは持っている。聴いているうちにここの背後には「ボエーム」があることに気づく。周りの人たちがミミに言及するが、確かにミミが生きながらえていてもジョルジェッタになった可能性もある。そして音楽も「ボエーム」第三幕の冒頭、入市税関所近くのカフェで女たちが歌うところを連想させる音楽もある。
 
中心となる三人ははまっていてうまい。男二人は歌唱、演技で適格だが、それにしてもグリゴリアンはあのラウレッタからこの可愛くてエロティックでしたたか、しかし同情も誘う、なんともいえない魅力的な存在感である。
 
そしてクライマックス、ここでオーケストラが主人公に躍り出る。そうなると軽いオケではだめで、イタリアのオケよりドイツ系の方がいいかもしれない。ここはウィーンフィルだけあったといえるだろう。
 
半世紀近く前にカラヤンが録音した「ボエーム」はベルリンフィルで、驚かれたものだが、聴いてみて特に襲いかかるようなクライマックスはこのオケでないと、と納得した。それはこの「外套」でも同じであった。
 
ところでこのドラマの中での「外套」は過去の、そして今この悲劇の、なにかをしばしあまく覆ってくれるものという役割だが、そういえば「ボエーム」でもあの哲学者コルリーネが最後なにかミミに役に立つものをと、思い出がつまった外套を質屋に持っていくエピソードがあったっけ。


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