「ゼア・ウイル・ビー・ブラッド」(There Will Be Blood、2007米、158分)
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン、原作:アプトン・シンクレア「石油!」、撮影:ロバート・エルスウィット、音楽:ジョニー・グリーンウッド
ダニエル・デイ=ルイス、ポール・ダノ、ケヴィン・J・オコナー、ディロン・フレイジャー
19世紀末から20世紀30年ころまで、アメリカの石油採掘でのし上がろうとした男の物語で、あそこに血があるだろう、というのはもちろんあそこに石油があるだろう、から転じたものだろう。ここで血とは、文字どおりの血に加えて「血縁」、「家族」と考えられる。
まだ多くの人たちに開かれていたアメリカの大地と石油の採掘、原理的カルト的な宗教、この映画が描こうとしていたのはまさにこういうアメリカを動かしてきたものである。
そして主人公を演じるのがダニエル・デイ=ルイスで、2時間を大幅に超えるということから、かなり覚悟したわりには映画は淡々とした叙事詩的な面が大きく、カメラワークのよさもあいまって、最後まで飽きずに見ることが出来た。
大統領選挙にあわせて、こういうアメリカの背景について、日本でも多くの解説がされていたからそんなに驚く話ではないけれども、話の最後まで一旗あげることと宗教がついてまわるというのは、人工的な国ならではだろうか。
ダニエル・デイ=ルイスは予想通りの出来で、かなり老けた作りをしている。他の作品と比べて、これでオスカー獲ったというほどではない。教会牧師のポール・ダノはこの役が持つ臭みをうまく出している。もっともこういう役はやりやすいかもしれない。
主人公が連れ歩く子どもの結婚相手以外に、これといって女性は登場しない。このあたりは少し不自然。
油井の完成、そして物語の最後からクレジット、二つのタイミングで入ってくるブラームスのヴァイオリン協奏曲第三楽章、なかなか効果的だ。
主人公が金持ちになって後の邸宅、中にボーリング場がある。そういえばホワイト・ハウスにもあるらしい。
なお、この映画は故ロバート・アルトマン(1925-2006)に捧げられている。