メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

黒いオルフェ

2019-04-02 17:03:29 | 映画
黒いオルフェ(ORFEU NEGRO、1959仏・葡萄牙、107分)
ポルトガル語版
監督:マルセル・カミュ 原作・ヴィニシウス・デ・モラエス
音楽:アントニオ・カルロス・ジョビン、ルイス・ボンファ
ブレノ・メロ(オルフェオ)、マルペッサ・ドーン(ユリディス)、ルードレス・デ・オリヴェイラ(ミラ)、レア・ガルシア(セラフィナ)
 
私がものごころついた頃、公開され、評判になったのは覚えていて、なによりここで使われている「カーニヴァルの朝」がヒット・チャートの上位にもなった。もっともその時は曲名も「黒いオルフェ」とされていた。
その後、半世紀以上経って初めてみることになった。モノクロと思っていたが、カラーでカメラはリオのカーニヴァルをみごとにとらえている。
  
地元でいやな男に付きまとわれ、カーニヴァルの前日、従姉をたずねてリオの港についたユリディス、恋人ミラと結婚目前のオルフェオと偶然会い、彼女の従姉はオルフェオ、ミラと知り合いで、いつのまにか二人は恋人同士になる。
ほぼ全編、前半は前日に皆がダンスの練習に明け暮れるサンバのリズム、夜明けのわずかな時間を経て、再度本番のサンバ、これが耳につくわけだが、そんななかでのストーリーの進行に違和感や不快感はなく、快感も心配も、同情もすべてそのリズムに乗って進んでいく。
 
二人の名前から連想される伝説のとおりにいくかと思うと、あの「ふりかえったら、、、」の台詞は使われるのだが、そのとおりではない。別の形の悲劇となるが、それでもカーニヴァルとブラジル、リオというものの激しさ、悲しさ、美しさが重層的に見る者に効いてくる。
 
それでも、最後、生を肯定して終わっていくのは、監督の視線が主人公たちの近くにいた二人の少年たちを通した部分があるからだろうか。
 
音楽はやはり、少年がオルフェオに教わりギターを弾いてみる「カーニヴァルの朝」(ルイス・ボンファ)、そしてサンバの細かいリズムを背景にそれとは対照的な「フェリシダージ」(悲しみには果てがなく、しあわせには終わりがくる)(アントニオ・カルロス・ジョビン)が印象的で、この二曲が映画を離れても、いろんな形でいまでも好まれているのはもっともである。

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