メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ローラーガールズ・ダイアリー

2011-08-15 12:26:04 | 映画
「ローラーガールズ・ダイアリー」(WHIP IT 、2009米、112分)
監督:ドリュー・バリモア、原作・脚本:ショーナ・クロス
エレン・ペイジ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、マリア・ショーカット、ダニエル・スターン、ジミー・ファロン、アンドリュー・ウイルソン、ジュリエット・ルイス、クリスティン・ウィグ、ドリュー・バリモア
 
日本でも1960年代後半にTVでかなり放送されたローラーゲーム、それに加わることになった高校生(エレン・ペイジ)が、娘をいろいろなコンテストで優勝させることに熱心な母親との葛藤に悩まされながら、最後は、、、という青春映画にはよくありそうなものである。
 
とはいえ、この映画はよくできていて、気持ちよく見ることが出来る。ドリュー・バリモアはこれまでプロデュースにも随分かかわっているけれども、「2番目のキス」(2005)などではこの分野での才能をうかがわせていた。そしてこの作品が初監督だそうである。
 
生まれたときから映画に囲まれていたからか、まずセンスがいい。それも描きすぎない、くどくならないところが秀逸である。ふつうならポイントになる場面で、セリフ、カメラワークなどにこってたっぷり撮るところを、それは撮ったあとの編集の結果かもしれないが、あっさりと次の場面に移っていく。しかし見ているものはその間に何があったかは容易にわかる。それがいいテンポになっている。最後のゲームシーン、そして結果は男が作るともっと違ったものになったかもしれないが、「コンテスト」との対比からはこれでいいのだろう。
 
エレン・ペイジは小柄だが期待の人らしく、可憐でありここではぴったりはまっている。それにローラーゲームでの役割は、どちらかというと格闘ではなく、得点をかせぐ身のこなしが軽いスピードスケーターだからこれでいいのだろう。原題にあるWhipは彼女のような役割(ジャマーという)を味方がその腕をつかんで前方にムチをうつように放り投げる動作からきている。
 
母親役のマーシャ・ゲイ・ハーデンが存在感を出している。どこかでと思ったら、「ミスティック・リバー」だった。父親役ダニエル・スターンもこれまたどこかでと思ったら「ホーム・アローン」の泥棒役。
 
ジミー・ファロン、アンドリュー・ウイルソン(オーウェン・ウイルソンの兄)あたりは、監督にとってコメディ映画仲間なんだろう。
 
ローラーゲームは私の世代には親しいが、その後あまり話題にならなくなった。米国でもメジャーではないのだろうが、バリモアの眼のつけどころはなかなかである。
 
米国では特に女の子には様々な「コンテスト」があるようで、こういうことへの親の思い入れは、日本よりもむしろ強いのだろうか。秀作「リトル・ミス・サンシャイン」(2006)にもそういう背景があったようだが。

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ミレニアム2 火と戯れる女 (スティーグ・ラーソン)

2011-08-11 14:49:47 | 本と雑誌
「ミレニアム2 火と戯れる女」上下  スティーグ・ラーソン著 ヘレンハルメ美穂・山田美明訳 2009年 早川書房
 
ミレニアム三部作の二つ目である。先に書いた1はそのミステリアスな背景、プロットが秀逸だったが、そこに主人公のジャーナリストにからんで調査で協力する、というかなぜか調査にはいってきてしまった女(リスベット)がの出生からこれまで、そしてそれにも起因する大騒ぎのなかで、いかに状況を切り開いていくか、そして自身の動機に忠実にいかに行動するか、という物語である。
 
最初は事件は起こるものの前作ほど動きがなく、どちらかといえば世間によくある組織内のいやな男たちと、それに耐えながら生きていく女性たち、極論をいくサランデルといった進行。
といっても常套的なフェミニズム、ジェンダー論ではなく、あくまで人と人の間での話だから自然であり、読み応えはある。
 
ただ、終盤の様々な格闘シーンとその結果については、ちょっと現実にはありえない感じがするのだが。
 
でもここまでくれば、この映画も見て、第三作にも進んでいかなくては。

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