メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

歌劇「マクロプロス事件」(ヤナーチェク)

2012-04-13 17:44:20 | 音楽一般
歌劇「マクロプロス事件」
作曲:ヤナーチェク、原作:カレル・チャペック、演出:クリストフ・マルターラー
エサ・ペッカ・サロネン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
アンゲラ・デノケ(オペラ歌手)
2011年8月 ザルツブルク祝祭大劇場 2012年3月NHK BS で放送録画
 
見るのも聴くのも初めてである。ヤナーチェクのオペラは、いくつか題名だけ知っているが、これはほとんど頭になかった。晩年の1923-1925年に作曲されたようである。
 
かなり変わった設定で、100年前1820年代からもめているある遺産相続、それも名家の子孫と非嫡出子の子孫の間で、遺言書だとかいろんな証拠が争われている。後者の子孫が頼んでいる弁護士事務所からはじまり、そこに宮廷劇場プリマドンナの歌手が現れ、どうも彼女がこの件にかかわっていて、しかも300年も生きているということらしい。
 
いつまでもついてくる過去、長生きするのにどんな意味があるのか、、、ということを聴衆に考えさせる。
 
複雑な糸がほどかれていきフィナーレ。3幕の間、舞台の袖で不思議な無言劇が演じられる。この演出では弁護士事務所の装置がほぼ変わらないで使われるのだが、それが劇場楽屋、ホテル、裁判所のようにも見せている。
 
そしてなんといってもここではアンゲラ・デノケが独壇場の演技である。濃いメイク、長身で、脚線美を強調し(これは物語としても意味があるようで)、このドラマを支配する。表現力がある歌唱も最後まで衰えない。音楽は特に浸れるようなものよりは、刺激的ではあるけれども、聴くことによって劇の進行にうまく身を委ねることが出来る。
 
サロネンの指揮も的確。終わってのカーテンコールは、細かく演出されているかのような形であった。 
ともかく、こういうものが観られるのはありがたい。

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死の泉 (皆川博子)

2012-04-12 17:11:31 | 本と雑誌
死の泉 皆川博子 著 (ハヤカワ文庫)(1997年)
 
文庫で700頁弱の大作、読むのが遅い私は、面白くても一気には読めないので、受け取り方に正確さを欠いたかもしれない。
 
1940年頃の南ドイツからザルツブルグあたりを舞台に、ナチスのアーリア人種選別育成政策をもとにした幼児収容育成施設、対象はは孤児あるいはシングルマザーの子供たちで、そこの医師でSS幹部でもある男と、彼が妻にした若い女性、養子たち、その本当の父親、彼らがナチスの崩壊、戦後の残党の暗躍などの中で、繰り広げる壮大で奇怪な物語である。
 
医師は、ボーイ・ソプラノとその特質を大人になっても持ち続けるカストラートへの偏愛があり、それが物語の進行でもキーになっている。
 
作者の美術、音楽の趣味が強く反映していると見られ、随所にマーラーの「子どもの不思議な角笛」が出てくるけれども、これは物語によくフィットしている。
 
参考にした多くは海外の文献があるとはいえ、これだけの構成はよほどの知識とこの世界に対する好奇心がないと出来ないだろう。 
 
そしてこの本は、物語にも登場する一人の男がその過去を書いた物語の翻訳、という体裁をとっている。もちろん虚構としてということは明確にされているのだが、こうすることによって読者が、創作であるにしても、自然に読み進むことを可能にしているかもしれない。 
 
ただ、登場人物の誰かに特に感情移入できるということはない。

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ジャクソン・ポロック展

2012-04-11 17:48:17 | 美術
東京国立近代美術館 2012年2月10日-5月6日
 
ジャクソン・ポロック(Jackson Pollock 1912-1956)の作品は、ブリヂストン美術館などで少しずつは見ているものの、画家としてのイメージが出来るまでには至ってなかった。
今回は具象絵画を描いていたごく初期から晩年まで、多くの作品が展示されている(日本国内にあるものほぼ全てを含む)。
 
初期から1930年代では、何から学んだか、影響を受けたかが素直に出ていて面白い。
ミケランジェロのシスティナ天井画一部のスケッチ(?)、かなり多くのエル・グレコ調のもの、影響をうけそれを超えるために苦闘したピカソ、そしてクレーなど。
 
こうしてみると、ポロック特有のあのペイントたらし(pouring)技法とアクションは、ある必然とも考えることが出来る。
 
そして中でも、35年前にイラン革命により門外不出となっていた「インディアンレッドの地の壁画」(テヘラン現代美術館)は、確かに最高傑作で(現在の評価額200億円とか)、これを今回見ることが出来るのは貴重である。見ていて不思議と静かに刺激され、しかも飽きない。

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glee2のゴスペル「明日に架ける橋」

2012-04-10 21:18:29 | テレビ番組

gleeの話の続き。
glee2の確か2回目に、部員の一人メルセデスがいつも行っている教会で、聖歌隊と一緒に「明日に架ける橋」を歌う。ゴスペルである。
話にはきいていたが、ゴスペル・シンガーズによるこの歌を見聞きするのは初めて。

 

「明日に架ける橋」をサイモンとガーファンクルがリリースしたのは1969年、その少しあと1971年にアレサ・フランクリンがフィルモア・ウエストでゴスペルの形で歌っている。
そして、アパルト・ヘイトが激しかった南アフリカの教会では、皆これはもともとゴスペルだと思って歌っていたそうだ。
これは確か、9.11のあと「sail on silver girl 」の歌詞のせいもあって歌うことが難しくなり、それからポール・サイモンが立ち直る、という話の中で知ったように記憶している。 

 

創られた時の意図とは別に、こうしてゴスペルで歌われるのも、とてもよくフィットしていて、この曲の持っている不思議な力を感じる。音楽というのはそういうものだろう。

 

gleeの製作陣、なかなかである。


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glee2

2012-04-09 11:19:36 | テレビ番組
glee2(gleeシーズン2、gleeのパート2)を見終わった。3月に22回を一週間NHK BSで一挙放送という形であったから、これは当然録画して、ということになる。
 
歌う場面をのぞくと、どうかと思う話やキャラクターがほとんどだから、どうなることかと思っていたが、そこは最後の3回あたりで課題に始末を、かなり強引なところもあるが、全体としてはうまくつけた。
そして州大会、全国大会(ニューヨーク)で歌う曲はこれまでと違って生徒が自分たちで作るという設定のgleeオリジナル、それもメンバー各自の問題、ペアの問題を歌詞に織り込み、うまく作られていた。 
 
さて最後のところで主要メンバーは卒業まであと1年あるという話だったが、パート3もあるようだ。
今回のラストからすると、かなり変わりそうな気もする。

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