「…終わっちゃった」
いつものように家に戻りソファと
リビングテーブルの間に座ってパソコンをやっていると
隣で同じように座っている智くんが
テーブルに顔を伏せたままそう小さく呟いた。
「……ああ、ひみアラ?
終わっちゃった ね」
そう言って横にいる智くんを見た。
5人でやってきた番組が終わってしまうのは
やはり悲しくて寂しい事だ。
たとえ自分がその後に番組をやる事が決まっていても
それは同じ事で寂しい事に変わりはない。
「寂しいね」
そう操作していた手を止めその頭に手をやると
智くんはうん、と小さく頷いた。
“また落ち込んでるな”
そう思いながらその頭を自分の方に引き寄せると
素直に頭を寄せてきた。
5人でやってきた番組が一つなくなるというのは
自分達にとってとても大きな事だ。
一番それを敏感にそして強く感じているであろう
智くんにとって多少なりとも影響を与えてしまう事は
仕方がない事のように思えた。
「おいで」
そう言ってテーブルを前側にずらすとその身体を引き寄せる。
智くんはそのまま素直に身体を寄せてきた。
そして自分の足と足の間に智くんの身体が
入るように座らせるとその身体を包み込むように
腕を回し抱きしめた。
こんな時、
5人はずっと一緒だから大丈夫だよ、とか
これからまた5人で新しい番組ができるように
頑張ろう、とか
そんな言葉を掛けたところで
智くんにとってはとても無駄なことのように思える。
智くんは人に相談したりするタイプではなく
自分の中でじっくり考え解決し前に進んでいく人だ。
それが嫌ってほど分かっているので何も言わない。
そのまま二人無言で過ごす。
どれ位そうしていたのか。
気がつくとスースーと寝息が聞こえてきた。
「……えっ?ちょっ、寝ちゃったの?」
その言葉に返事はなく虚しく寝息だけが響く。
“そのまま寝ちゃったのか”
こんな時でさえやっぱり可愛いなと思ってしまう
自分に苦笑いをする。
“ま、強い人だから明日にはいつもの智くんに戻ってるだろう”
そう思いながら身体をゆっくりとずらすと
その身体を抱え上げて寝室まで運ぶ。
“何かしょっちゅう俺が運んでない?この人の事”
運びながらも何だかおかしくなってきて
その身体を抱きかかえながらつい声を出して笑ってしまう。
ベッドに寝かせるとその顔を眺める。
その寝顔はいつみても年上とはとても思えないくらい
無邪気で可愛らしい寝顔をしている。
でもどれだけの実力と人気を兼ね揃えていても
この人はまだ少しの劣等感と不安が消せてはいない。
羨ましい位の才能を持ち合わせながらも
今回の事はまた置いていかれると不安を感じているのだろうか。
“愛している”
その眠っている顔に向かって独り言のように呟くと
頬にちゅっとキスをした。
しばらく飽くこともなくその寝顔を眺めていたが
その眠っている顔におやすみ、と言って額にキスをすると
リビングに戻り仕事を再開した。