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山コンビ大好き。

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きらり

山 短編8 中 (シェアハウス)

2014-06-30 17:08:41 | 短編





そんな感じで始まった


智くんとのシェアハウスは


なぜか上手くいっていた。





それは多分


お互いに相手の事を気遣い


生活していたせいもあるだろうし


話したいタイミングとか


部屋を片付けるタイミングとか


ごはんを食べるタイミングとか


寝るタイミングとか


食べたいものとか


好きなものとか


そんな小さな一つ一つが


合っていたせいかもしれない。









最初は


他人と暮らすなんて考えられないと
2週間もしたら実家に帰るつもりだった。


だから荷物も最低限のものしか運ばなかったし
ここに住むなんて格好だけで
父にはどうしてもダメだったからと
智くんじゃないけどそう言ってすぐ帰ってこようと思っていた。






でも


今は


この降って湧いたようなシェアハウス生活を
楽しんでいる自分がいる。









そして智くんはと言えば


本当に一人になりたい時は自室にいるようだったけど
たいていはリビングにいた。


ソファに座ってぼーっとしていたり
ぼんやりとテレビを眺めていたり
雑誌やスマホを見ながら足を投げだして寝そべっていたり
時にはスケッチブック片手に真剣に絵を描いていたりする。
そんな姿を何気なく眺めているのが好きだった。


お互い会話をするわけでもない。
一緒にテレビを見ているわけでもない。


でもずっと昔からそうしていたかのように
お互いが思い思いにこの部屋で好きなように
過ごしているのがすごく好きだった。








そしてこのシェアハウスに引っ越してから
数日が過ぎ夏休みも終わった。


智くんは大学には行っているようだったけど
最低限の授業だけしかとっていないようで
家にいることが多かった。


大学がある日も講義を受けると
寄り道をすることもなく家に帰ってきているようで
家に帰ると大抵リビングにいた。
まあ、今はまだ友達と飲みに行ったり
はしゃいだりする気分にはなれないのだろう。


そして自分はといえば今までどおり
大学に通いコンパや飲み会に誘われれば参加し
たまに家庭教師のバイトをしたりデートしたり
そんな日々を過ごしていた。








でも


なぜか


8時を過ぎると落ち着かなくなってくる。
はやく家に帰りたいとそわそわしてくる。


今まで実家にいた時はそんな事
思ったことなかったのに。
それはとても不思議な感覚。


そして急いで家に帰ると智くんがソファから
おかえりといつもと変わらない笑顔で迎えてくれる。
それがなんだか嬉しくて
そしてなんだか幸せだった。











そしてこの日は


いつものように二人ソファに座ったり寝そべったりして
思い思いに過ごし、そしてそろそろ寝よっかと言って
2階に行く準備を始める。


でも智くんはなぜか動こうとはせず
何か言いたげな顔をして見つめてくる。


「どうかした?」

「……あの さ、今日、翔くんの部屋で一緒に寝ていい?」


何か言いたげな顔をしていたのでそう聞くと
とても言いづらそうに
そして遠慮がちにそう言った。






「へ?」

「あ、いや、嫌だったらいいの」

「……いや、いいけど」


でも


一緒に?
一緒に寝る?
ってどういうことだろう?
布団を持ってきてベッドの脇に敷いて寝るって事?
暑くてエアコンかけて寝てるから二部屋だと
もったいないってことだろうか?


そんな事を思いながら2階に行き部屋に入ると
智くんも一緒に入ってきた。
布団は後で持ってくるのかな?
なんて思っていたらなぜかベッドに一緒に入り込んできた。


驚いて顔を見ると智くんは、んふふっと可愛らしい顔で笑った。
可愛いんだけどね。








けど


ええぇ?


一緒にって、一緒のベッドに寝るって事?
脇に布団敷いて寝るんじゃなくて?
うそでしょ~?


いやでも修学旅行とかではヤローと
一緒に寝るとかってあったことはあったけど。
友達の家で飲んでてそのまま寝ちゃったとかあるけども。


でも同じ布団とかじゃなかった。
雑魚寝みたいな感じはあったけど
同じベッドとかはなかった。








軽くパニックに陥る。
そして変な汗が出て
緊張が走る。


そしてそんなこちらの思いに関係なく智くんは
布団から顔だけ出した状態で
おやすみと可愛らしい笑顔を向けると
そのまますぅすぅと寝息を立てて寝てしまった。





「……」


どういうこと?
それとも意味なんてないのだろうか?


隣では智くんがスヤスヤ寝息を立てて眠っている。
その寝顔を眺めた。


大きめのベッドだといっても
こんなに近くで
一緒の布団で
相手は男の人で
とても寝られそうもない。


いくら華奢で綺麗な顔立ちをしているといっても
そこにいるのは紛れもなく男の人。
それも最近まで顔も名前も知らなかった人。


緊張してとても寝られそうもない。







そんな風に思っていたのにいつの間にか
眠ってしまったらしい。
気づいたら朝だった。


隣では智くんがまだスヤスヤ眠っている。
やっぱり信じられない。


身体はなるべく触れないようにと
そして寝ている間に蹴ってはいけないと
緊張して眠っていたせいなのか
全身カチコチに固まっている。


そんな事を感じながらその横にあるまだスヤスヤ
眠っている智くんを見つめた。








長い睫毛。
小さな唇。
整った綺麗な顔立ち。


その顔を見つめていたら
突然智くんがパチっと目を覚ました。


「うおぉっとびっくりした~」

「?」


智くんは何をそんなに驚いているのかと
不思議そうな表情を浮かべる。


「おはよう」

「……おはよう」


そしてにっこりと笑っておはようって言ってきたから
おはようと返す。
かわいいんだけどね。






「昨日はありがとう。おかげでゆっくり眠れた~」

「……え? もしかしてずっと寝れてなかったの?」


確かに顔色はあまり良くなかった。


「うん、まぁ。何か怖い夢ばっか見るんだよね
で、どうしよう、どうしようって」

「そうなんだ」

「でも翔くんにとっては窮屈だし迷惑だったよね?ごめんね」

「……でも昨日は大丈夫だったんでしょ?」

「……うん」

「だったらこれからも一緒でいいよ」

「……ホント?」

「うん、別に減るもんじゃないし」


緊張はするけどね。
全身緊張してカチコチだけどね。


でも、父の言ってた
儚くて壊れてしまいそうで
どうしてもほっておけなかった
っていうのが何となくわかる気がした。


だから男の人と一緒のベッドに寝るなんて
とても信じられないけど
すごく緊張もしてよく眠れないけど
身体も全身カチコチになって痛いけど


でもいいよって言ったらすごく
すごく嬉しそうな顔をして
智くんは笑った。









「ありがとう翔くん」

「いやいや。じゃ下に行ってご飯でも食べますか?」

「うん。あ、そうだ、昨日フランスパン買ってきたよ~」

「ふふっ相変わらずパン好きね?」

「うん。大好き」

「ふふっじゃあそれに目玉焼きでも焼きますか」

「うん。じゃあ俺コーヒー淹れる」


そう言ってお互い笑いあった。









そして


それから


智くんは毎日のように


猫みたいに


ベッドに一緒に入ってきて


そして


一緒に眠った。