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山コンビ大好き。

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きらり

山 短編8 その後2

2014-10-10 21:09:50 | 短編




[短編9の途中なのでわかりづらいと思いますが、これは短編8シェアハウスの続きです]











「……」


何か、違う。


何かが、違う。





そう感じたのは、暑さがまだ残る


9月の終わりの頃だった。









天は二物を与えず




昔からよく聞く言葉だけど


それってホントかな?


この人を見ると、いつもそう思う。




中学の時から一緒になったサクライ ショウという人は
とても端正な顔立ちをしていてかっこよく
そしてとても努力家で頭の良い人だった。


家柄も良く、兄弟3人とも幼稚舎の時から附属に通う。
でも、それを鼻にかけることは一切なく
中学から附属に入って、しかも自他ともに認める
お調子者の自分に対しても、普通に接してくれる。


中学の時から付き合っている彼女もいたけど
それを変に隠すこともなく仲間内にオープンにする。
そして、彼女がいても彼女だけ、とは決してならず
仲間との付き合いもとても大事にする。
そんな人だった。






でも


大学一年の夏休みが終わってから


何か、違う。




大学には、今までと同じように通っている様に見える。


でも、何かが違う。






例えば


そう。


今までは講義が終わると、何だかんだとくだらない事を喋ったり
どっか寄ってから帰るかと、お互いどちらともなく言って
寄り道したりして帰ったりしていた。
そして合コンや飲み会がセッティングされたと聞けば
それに参加したりと普通に大学生活をエンジョイしていた。


けど今は、違う。
その日最後の講義が終わると
脇目も振らず一目散に家に帰りたがる。


合コンや飲み会なども、誘えば今まで通り参加は、する。
けど、なぜか8時頃になると妙にそわそわしてきて
しまいには先に帰るから後はよろしく、なんて言って
帰ってしまう。
そうすると櫻井目当ての女の子がワンサカいるのに
そりゃないよって事にもなってしまうのだ。


今までは付き合いも良くて、最後までいるのが当たり前で
そのまま誰かの家でごろ寝なんて事もあったのに
今となってはそんな事があったなんて、夢のよう。


そう言えば、高校から付き合っていた
かなちゃんとも別れたと聞いた。
けど、その後誰かと付き合ったという話も全く聞かない。


あんなに絶え間なく彼女がいたやつなのに
(ていうか女の子の方が放っておかない)
今は告白されてもすべて断っているという、もっぱらの噂だった。
その時は何てもったいない話だ、なんて聞いてたんだけど
今となっては不思議で仕方がない。


彼女が新しくできたという訳でもなく
お金に困って、バイトを増やしたという訳でもない。
かなちゃんと別れたって聞いた後も、辛そうな感じは全くなかった。


それよりも、かえって幸せそうというか
なんだか浮き足立っていて、妙にウキウキしているというか。
それが、不思議でたまらなかった。


12歳の時から、櫻井の事は知ってるけど


でも、そんな顔、知らない。











そんな日々が続き
一人モヤモヤした気持ちを抱えていた、あの頃。


公園の木々も随分と色を変えて、秋が深まってきたなと
感じられるようになった、あの日。
暫く、櫻井が大学に姿を見せない日が続いた。


電話やメールで確認しても良かったのだろうけど
思い切って家を訪ねてみる事にしたのだ。
今までも櫻井の家には、中学の時と高校の時と
何度か来たことがある。


「相変わらずでけぇな」


そんな事を思いながらインターホンを鳴らすと
妹のマイちゃんがでてきた。


「新美さん、お久しぶりです」


そう言ってマイちゃんは、にっこりと笑う。
相変わらず櫻井とソックリで、目がクリクリしてて可愛いねぇ。
なんて、のんきに思いながら櫻井の様子はどうかと聞くと
マイちゃんは思いがけない事を口にした。


「……え? 今、ここに住んでない?」

「あれ? お兄ちゃんから聞いていないんですか?」


一言も聞いてないよ~。


しかもシェアハウスって? マジかよ。
ずっと友達だと思ってたのに
そんなシェアハウスとやらに住んでいるだなんて
全然知らなかった。
何だかすご~く寂しいんですけど。


そんな事を思いながら、そのシェアハウスの場所を
マイちゃんに聞いたら、思いっきり近いし。
って、同じ沿線上じゃん。
なのに、なぜわざわざ家を出てシェアハウスなんて。
意味わかんない。
そんな事を思いながら、半分涙目でその家に向かった。












マイちゃんに地図を書いてもらったので
場所はすぐに分かった。ってやっぱり近いよね?
なぜそんな所に、わざわざシェアハウスなんて?
そんなことを思いながら、なぜか妙にドキドキしつつ
インターホンを鳴らした。


「は~い」


そう言って玄関から顔を出したのは、なぜか弟の修也だった。
どういう事?
そんな疑問を抱きながら、おっきくなったな~なんて言って
頭をガシガシすると修也はやめて下さいよ~なんて言って
ワタワタと手をやって、振りほどこうとする。
って当たり前か。修也に会うのは修也が小学生以来だもん。


「新美さん、どうしたんですか?」

「いや、櫻井が最近大学来てねえから家に行ってみたら
ここにいるって聞いたからさ。ちょっと来てみたんだけど」

「そうなんですか。ちょっと兄ちゃん、風邪をこじらせてしまったみたいで」

「風邪なんだ?」

「そうです。もう、だいぶいいんですけど。
あ、どうぞ。ってここ、俺んちじゃないですけど」


そんなやり取りをしながら、家に入れてもらう。
そしてそのまま通された部屋に入ると
そこはキッチンとダイニングとリビングが一体となった
大きな部屋だった。


いい部屋じゃん~。


そう思いながら、通されたリビングのソファに腰掛ける。
ソファに座って改めて周りを見渡すと、リビングの中には
2階に通じる階段があって、そこは大きな吹き抜けになっていた。


「いいとこ住んでんね~」


さすがお金持ち。
なんて思いながら、こんないいとこ住んでいるのに
何で黙っていたのだろう? と、疑問が沸いてくる。
そう言えば、シェアハウスって言ってたっけ。
ってことは誰かと一緒に住んでいるって事?


「修也もここ住んでんの?」

「まさか、住んでないです」


そう思いながら修也に聞くと、違うという。


「ああ、そっか。兄ちゃんが心配で様子見に来てたんだ?」

「……え? まあ」


あれ? 今の間はナニ?
それに顔が赤くなったような気がするのは気のせい?


「じゃあ一緒に住んでいる人は?」


そんな事を思いながら、一緒に住んでいる人の存在が
気になり聞いてみた。
って、内緒にしてたって事は、まさか女じゃないよね?


「兄ちゃんの部屋で看病してます」

「……?」


看病?
シェアハウスの同居人が?
ってやっぱり、女?
って我ながら思うことは、そればっかりだな。


「そっか。俺、櫻井の様子見にいきたいんだけど、いいかな?」

「……大丈夫だと思います」


そんな自分に呆れながら、さっきからその変な間は何だろうと気になる。
そう思いながらもそのシェアハウスの同居人とやらの
存在も気になり部屋に行くことにした。


「どっち側?」

「右側です」


吹き抜けになっているので一階から二階が見渡せる。


ホント凄い立派な家だよね?


そんな事を思いながら、だいぶ良くなったとは言え
風邪だって言うしもしかして寝ているかもって思って
静かに階段を登っていくと、小さくノックをした。


「はい」


中から聞こえてきたのは、櫻井ではない別の人の声。
すみません、失礼します~なんて言って
ドキドキしながら静かに扉を開ける。
何でさっきからこんなドキドキしてんだろ?
そう思いながらも部屋の中に入った。


そこには大きなベッドがあって櫻井がすやすやと眠っていた。
そしてベッドの奥には大きな掃き出し窓があって
その窓際に椅子を置いているのかちょうど
真正面に向かい合うようにそこに男の人が座っていた。


「……」


その人の顔を見て、一瞬言葉を失う。


大きな掃き出し窓にはレースのカーテンがかけられていて
そこから太陽の日差しが優しく降り注いでいる。
櫻井の顔にはかからないように、厚手のカーテンで
調節してあって、顔を上げたその人の顔に光がかかる。
それがキラキラしていて、何だかとても綺麗だった。


「……」

「……あの?」


いつまでも黙って見つめていたせいか
その人が不思議そうな顔をしてそう言った。


「あ、すみません。俺同じ大学の新美って言います。
櫻井がここんとこ大学に来てないようなので
様子を見に来ました」


その綺麗な顔に見つめられ緊張してしまう。
余りにも緊張しすぎて、書いてきた挨拶文を
そのまま読んでるみたいに答えた。


「あ、そうなんですか。今、ちょうど寝ちゃった所で」


そう言って、その人は櫻井に目をやる。
その姿がちょうど光に当たっていて、こんな事思うのは
変かもしれないけど、とても神々しく見えた。
その姿を見てドキドキする。


「もう少しで目が覚めると思うので
下でお茶でも飲んで待ってますか?」


「あ、そうさせてもらえたら、凄く光栄です」


うわーん。やっぱりその顔を見ていたら緊張して自分自身
何言ってんのかわかんない。
そう思いながらその人を見ると、ふふってこちらを見て笑った。
そしてもう一度、櫻井の方を優しい視線で見つめる。
その櫻井に向けられる視線に、またドキッとした。


今までにないタイプの男の人。
男の人だけど綺麗という言葉がぴったりで
笑った顔は可愛らしい。


そんな人、今まで出会った事がない。
櫻井も綺麗な顔立ちだとずっと思っていたけど
櫻井とはまた違ったタイプの美しい人。
その姿を見て、またドキドキした。


そして、そのままその人についていくように下に降りると
修也がソファに寝っ転がってテレビを見ていた。


「大野さんっ」


修也はその人に気づくと、ぱっと嬉しそうな表情になり
そう言った。
俺もいますよ~?


「修也くん、つまんなかったでしょ? ごめんね」

「ううん。兄ちゃん風邪だって知ってるのに
俺が勝手に来てるだけだから」


そう思いながら修也を見ると、修也はなぜか顔が真っ赤になった。


「……」


わかんねぇ。

いや、わかる、かも。

きっと自分も同じだ。


この人と目が合うと、なぜか緊張して顔が赤くなるのが自分でもわかる。
何故だかドキドキしてうまく話せなくなる。
こんなこと今までなかったから不思議なんだけど。


「そこら辺に腰掛けて、ゆっくりしててください」

「あ、ぁ、ありがとうございます」


そう言って大野さんはにこって笑った。
やっぱ、かわいい。
って男だよね?


この人になぜだかいちいちドキドキする。
目が合うと顔が真っ赤になって
話すと緊張してうまく話せない。


修也を見ると、その人のことをテレビを見ながら
嬉しそうにちらちら見ている。
だから一緒になってその人の事を見つめた。


そうこうしているうちに櫻井が目を覚ましたのか
ボーっとした顔で階段を降りてきた。


「翔くん大丈夫?」


櫻井に気づいたのかその人はそう言って心配そうに
櫻井に駆け寄る。


「うん、寝て汗かいたらすっきりした」

「着替えわかった?」

「うん、ほら、着替えたの持ってきた」

「ホントだ」


そう言いながら、ふたりでふふって笑っている。
もう、それはそれは二人だけの甘い世界。
って、オイっ。


「ゴホン」

「あれ? 誰かと思えば新美?」

「さっきからず~~っといましたが?」


わざとらしく咳払いをしたら、ようやく気づいたらしい。
って、おせえよ。


「どうしたの?」

「櫻井が大学来てないって聞いて、様子見に来たんだよ」

「そうなんだ。わざわざ悪かったな」

「いや。でもそれにしても家を出てるなんて初耳だったよ」


そう言うと櫻井は、はっとした顔をした。


「言わなかったのは本当に悪かったけど
これからも誰にも言うつもりはないんだ。
だからお前も黙ってて欲しいんだけど」


櫻井はそう言って、いつになく真剣な顔で頼んでくる。
こんな顔みたのも初めてかも。
多分、この大野さんって人が理由なんだろう。
そして櫻井が変わったのも。


「わかった。誰にも言わないよ」


そういうと櫻井は、ほっとしたような顔をした。


「突然訪問なんかして悪かったな」

「いや、俺のこと気にして来てくれて、ありがとな」


そうは言ったけど、多分、誰にも知られたくなかったのだろう。


「あの、さ、誰にも言わないから、またここに来ていいかな?」

「は?」

「大野さんにもお会いしたいし」

「は?」


そう言うとさっきまでの笑顔から一転、
あからさまに嫌な顔をした。


「いいじゃん、取らないからさ」


そう言ってウインクすると、櫻井の顔が真っ赤になった。


わかりやす過ぎる。














「翔くん顔赤いよ。また熱出てきたんじゃない?」

「いや、大丈夫大丈夫」

「ダメだよ。ベッド行かなくちゃ」

「いや、ほんともう、大丈夫なんだけど」

「ダメダメ」


二人が帰ったあと
そう言って無理やりベッドに寝かしつけられた。


「でも、たまに風邪引くのもいいね」

「え?」

「俺のために心配してくれる智くんが、嬉しい」

「何だそれ?」


そう言って智くんはクスクス笑う。
だってずっと付き添っててくれるなんて滅多にないチャンスでしょ?
そう思いながら智くんを見つめると智くんは、ん?って
不思議そうな顔をして見つめた。
可愛すぎる。








「突撃、隣の晩ごは~ん」


あれから。
そう、馬鹿な事を言って、ここに来るやつが一人、増えてしまった。
智くんは、あまり気にならないようで、隣の晩御飯が来たよって言って
んふふって笑っている。


「もう、お前来んなよ」

「え~せっかく飲みもん買ってきたのに~」

「智さんも飲むでしょ?」


そう言って、頬を染めている。
しかも、なにげに智さん呼びだしっ、許せんっ。


「智くん、もうこいつほっといていいから」

「え~?」


何も知らない智くんは、え~なんて言っている。
だから知られんの嫌だったんだよ。
何が、突撃隣の晩御飯だ。
冗談じゃねえよ。
それでなくても修也にも邪魔されてんのに。
ふたりの甘い時間がぁああ。



なんとか酔っぱらいを家に帰し二人なる。

「ごめんね」

「ううん」


元はといえば風邪ひいてバレてしまったのが原因なんだけど
あれから新美はどんな人なんだとか、どんな食べ物が好きだとか
うるさいのなんのって。
しまいにゃあ、どんな花が好きって、そんなキャラじゃねーだろっつーの。
男のふたり暮らしに花なんて貰っても枯らすだけだっつーの。



「そろそろ寝よっか」


そんな事を思いながらモヤモヤしてたら智くんが
可愛らしくそう聞いてきた。


「うん!」


何だか妙に嬉しくて、とびきりの笑顔で答えたせいか
智くんがくすくすと笑う。
その顔を見て急に恥ずかしくなってきて、じゃあ、行きますか
ってわざとテンション低めにそう言っても智くんには
バレてしまっているようで、相変わらずクスクス笑っている。
可愛すぎる。


一緒に二階に上がるとベッドに一緒に入る。
どれだけ邪魔が入ろうとも、これだけは特別な空間で、特別な時間。
そう思いながら智くんを見つめると、智くんは顔だけ出した状態で見つめてくる。
智くんに、ふふって笑いかけると智くんも、ふふって可愛らしく笑う。


手を握ってその綺麗な手の甲に指に、ちゅっとキスをした。
智くんが、どうしたの?って顔をして心配そうに見つめてくる。


「何だか不安になっちゃった」


そう言うと、何でって顔をして頬に手をやり
やっぱり心配そうに見つめてくる。
その手を掴みもう一度唇を近づけちゅっとキスをした。


そして唇に指をそっとおいて口を小さく開かせるようにすると
その動きに合わせるように小さく口を開く。
その唇に唇をゆっくり押し当てるとそのまま深いキスをする。


「濃厚、だね」


唇が離れると


智くんはそう言って


んふふって笑った。


手を繋いでふたりでぼんやりと天井を眺める。


「これからもずっと、翔くんだけだよ」


そう天井を見つめたまま小さな声で呟くと、繋いでいた手に
智くんがギュッと力をこめる。


不安って言った意味が伝わったのかな。


「ありがと。俺もだよ」


そう言うと、智くんは手を繋いだまま
上半身をゆっくり起こし唇に唇を重ねる。



そのキスはとてもとても



優しくって



そして何だか切なくって



胸がギュッて、なって



少しだけ苦しくなった。



それを感じたのか智くんが優しく



ふんわり包み込むように



上からギュッと抱きついてくる。



だから背中に手を回してぎゅって抱きしめ返した。



「俺も、ずっと智くんだけだよ」



お互いぎゅっとした状態で、そう小さく呟くと



智くんが腕の力を少し弱め、少しだけ身体を離す。



そして、まっすぐな視線で見つめてきた。



そして、またゆっくりゆっくりと



唇に唇を重ねた。