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きらり

ありふれた日常 part31(ZERO×選挙2014)

2014-12-16 20:51:05 | 山コンビ ありふれた日常





「……」


テレビをつけると、そこには疲れを全く感じさせない
キャスターとしての顔があった。


ずっと一緒にいたのに、そこにいるのは別の人。
こんなに疲れているのに
そして同じように疲れているはずなのに
いや、それ以上に移動や考えられないくらいの膨大な下調べや取材など
心身共に疲れきっているはずなのに微塵も感じさせないその姿。


その姿を見つめた。





その人は


育ちがよくて
頭が良くて
アイドルを続けながらも学業に厳しい高校に通い
そして日本でも屈指の名門大学をストレートで卒業した。
とてもタフで
優しくて
そして端正な顔立ちをした
かっこいい人。





自分には、とてもありえない状況の中でも


全く物怖じせず対等に話をし


その存在感を知らしめる。




その姿を見て


いつかその人は


遠い、遠い存在になって


自分の事なんて


忘れてしまうんじゃないだろうかと


そう思った。















「……!」

「ふふっ凄く驚いた顔してる」


zeroが終わって智くんの家を訪れると
智くんが凄くびっくりした顔で見つめてきた。


「だって、今日約束してなかったよね?」

「そうなんだけど、あんなメール貰ったらね」

「え? いつものメールでしょ」

「そうなんだけど、なんとなく気になってさ」


凄く、凄く、たまになんだけど
身体を気遣う文面と労いの言葉が入ったメール。
選挙特番が終わった後に見たら入ってたんだよね。


「……」

「……どうしたの?」


智くんが座っている隣に座りそう言うと、悪いなって顔をして
気まずそうな表情になった。
多分疲れているのに、ここにこさせてしまったという罪悪感なんだろう。
そんなこと感じる必要はないのに、ね。
意外と気遣いやの智くんはとても気にする。


「ごめん。翔くん、凄く忙しいのに」

「それはお互い様でしょ?」

「全然違うよ。あの後選挙特番もあって今日もzeroがあったし」

「まあね。でもそうは言っても俺が来たくて来てるだけなんだけどね」

「……」


そう言うと智くんは何も言わずまっすぐな視線で見つめた。


「いや、違うか。俺がどうしても智くんの顔が見たくて、きてるだけか」

「……」


そう言うと、やっぱり何か言いたげな顔をして見つめてくる。


「……ん?」

「選挙特番も今日のzeroも見たよ」

「ふふっありがと」


智くんはドラマとかバラエティとかはあまり見ないけど
なぜかこういう報道番組は、わりと見てくれているんだよね。


「……」

「……?」

「あれ見て、翔くんは……」

「……ん? 変だった? なんかおかしなこと言ってた?」


智くんは黙って暫く考えるような顔をすると
一つ一つ言葉を選びながらポツリポツリと話し出す。


「違くて。逆」

「逆?」

「そう。将来、翔くんは、国を動かしていく方の立場の人に
なっていくんじゃないかって思ったんだよね」

「ええぇ?」


国を動かしていく方の立場のヒト??
って、何だかすごいこと言い出したね?


「いや、まだ、俺、嵐でいたいよ」

「今はね。でもいつか。もっともっと先の話だろうけど」


智くんって意外と何も考えてないようで
結構先の先のことまで考えている人なんだよね。
でも、まさかそんな先の事まで考えていたとは。
しかも何だか凄いこと言ってるし。


「そん時は、きっと俺の事なんて忘れちゃうんだろうなって」

「いやいやいや、そんなこと全然考えてないし」

「全然?」


そう言うと智くんは意外そうな顔をした。
そんな意外なことかな。


「いや、まあ、もし仮にだよ。
仮に、そう言う方の道に進んだとしても
俺が智くんを忘れる事なんて絶対ないよ」

「……そうかな?」

「そうだよ。それは間違いない」

「……」

「だってさ中学ん時からずっとあなたの事を見てきて
家族よりも長い時間一緒にいるわけでしょ。忘れるわけない」

「……そっかな」

「そうだよ」


それに、ずっと自分にとっては特別な存在で大切な人なのに
忘れてしまうなんて絶対にない。
でも、きっとそんな大きな存在であるって事を
智くん自身が一番わかってないんだよね。


「でも、まあ、今日来てよかったよ」

「……?」


智くんは何で?って顔をして不思議そうに見つめる。


「だって、智くんが、何でかわかんないけど
そう思って不安に感じてたんなら、きてよかった」

「そっか、ごめんね。翔くん。めちゃくちゃ忙しいのに」


智くんは申し訳ないって顔をする。
そんな顔する必要なんてないのにね。


「いや、忙しい時こその、智の存在だよ」

「ふふっなんだそりゃ。でも、来てくれてありがと」

「いや、俺こそ、智くんの顔を見て疲れも吹っ飛んだよ。
それに、さ……」

「……?」

「俺って、愛されてんなって」


そう言いながら自然と顔がにやけてしまうのを
なんとか抑えながらそういった。
なんか、ちょっと嬉しかったんだよね。


「……へ?」

「へ? じゃないでしょう?
だって今、言ってたでしょ、俺に忘れられちゃうんじゃないかって」

「そうだっけ」

「そうだったけじゃないでしょ。って、まあいいや。
智くん、好きだよ。最初会った時からずっと気になる存在で
思いがけず一緒のグループでデビューする事になって。
それでずっと一緒にいるけどずっと好き」

「ふふっ俺も翔くんのこと、やっぱり好き」

「やっぱりってなんだよ」

「やっぱキャスターの翔くんかっこいいもん」

「……」

「……ん?」

「なんか複雑な気分なんですケド」

「え? そう?」

「うん、でも、まあいっか」

「今日、来てくれてありがと。
なんだか翔くんが遠くに行っちゃった気がしたけど
こうやって翔くんを感じられて嬉しい」


そう言って智くんは背中に腕を回しぎゅっと抱きついてくる。
本当にこういうところがかわいらしい人なんだよね。
ずっとそれまで一緒にいたのにね。


でもこういうところが、惹きつけて離さないところでもあるのかな?
自分は結構自由にやっていて、こっちはいつも
ヒヤヒヤドキドキしているというのにね。
でもそういうところもひっくるめて全部が好きなんだよね。


そう思いながら両手を背中に回しぎゅっと力を込めると
智くんが、なあにって顔をして上を向いた。
目線が合う。
そのままその可愛らしい顔をじっと見つめると
智くんもじっと見つめてくる。


「どこにも行かないし、智から、もう離れられっこないよ」


そう
心も
身体も。


そう思いながら顔にかかった前髪をかき分け
ちゅっと額にキスをすると
背中に回された腕にぎゅっと力が込められる。


「そうでしょ?」

「……うん」


お互いに見つめ合い、そうでしょ? って聞くと
智くんが照れくさそうに小さくこくりと頷いた。


「智くん、好きだよ」


そして顔を近づけていくと
その可愛らしい唇にちゅっとキスをした。