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山コンビ大好き。

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きらり

山 短編11 ショウサイドストーリー2

2015-09-01 17:10:01 | 短編





その人の名前はわりとすぐに判明した。


というか


自分だけが知らなかっただけで


この学校ではかなりの有名人だったらしい。




入学時より


やけに美形のヤツが文系にいると。


しかも芸術的な分野に優れていて


小、中学校時代は絵画や書道で何度も入選したことがあると。


そして運動神経も抜群で


中でも器械体操を得意としておりバク宙、バク転はおろか


体操部のヤツでも難しいとされる側宙ができると


もっぱらの噂だった。










って。


絵画で入賞?


書道? 


器械体操? っていうか側宙ってナニ?


絵画←幼少期に絵を習っていたがその成果は??


側宙←バク宙バク転どころか側転もかなり怪しい。


書道←字で褒められたことが一度たりともない。






しかも





有名人というだけあって


みんな登校時


窓際にその人が立っていることを知っていた。







「あれはオアシスだよな~」

「そうそう、ご褒美っていうかさ~」

「あの地獄坂を登りきった後にあの顔を見るとホッとすんだよな」

「俺なんて毎朝あの顔見たいがために頑張ってる」


皆口々に好き勝手な事を言っている。


……って。


オアシス? ご褒美?


なんだそれ?


っていうか、知らなかったのは自分だけ?


何だか微妙にショックなんですけど。


「櫻井はミナちゃんに夢中だったから」

「そうそう毎日仲良く通ってたしね~」

「あ、今はユナちゃんか」


もうどっちでもいいよ。
しかも全然夢中じゃねえし。
まぁその存在に気づいていなかったのは確かだけど。






「しかもあの遠くを眺めている姿がまたいいんだよね~」

「そうそう、真っ直ぐ遠くを見つめるだけの視線が
何だか妙に神々しいんだよね」

「そうなんだよねぇ。こちらには一切視線を向けないのがまた
孤高の人っぽいんだよね」

「……」


どういうこと?


遠くを見てるだけ?


一切こちらには視線を向けない?


でも確かに視線は間違いなく自身に向けられていた。


しかもそれ以前にもずっと視線は感じていた。


そして視線が重なった。









みんながまだワイワイ盛り上がっている中


ひとり


顔が、身体が、カッと熱くなるのを感じた。


そして


その日から


普通の毎日が


普通の何気ない


高校生活が





変わったのが



わかった。








電車を降りるとすぐに目の前には坂がある。
短い距離だけどかなり坂がキツイ。


登っていくとそれはだんだん緩やかな坂に変わり
後ろを振り向くと下には乗ってきた電車の線路、駅
その奥には国道、そしてその奥には海岸、そして海が見える。


海の奥には水平線が見えて空と繋がっている。
空はどこまでも青くて高台にあるせいか遮るものが何もなく
とてつもなく大きい。


その景色を見てふうと大きく息を吸った。
そしてまた視線を戻し緩やかになった坂を
ゆっくりと上がっていく。


そして視線をゆっくりと上げていくと
いつもの場所にはその人がいて、視線が重なった。
視線が合う。


お互いわかっているはずなのに
やあっと挨拶をするわけでもなく
にこっと笑い合うでもなく
ただ視線が重なり合ったまま
無言で見つめ合う。








その真っ直ぐに向けられる視線に


そしてその美しい顔に


夢中になった。






ゆっくりすすんでいます。

またまた短かったかな? すみません。

ちょっとずつでもアップしていいのか悩みます。