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山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

Song for me 1

2016-07-05 20:06:10 | Song for me





順調な毎日。




ずっと決められたレールの上を走ってきた。


それなりの家に生まれて


それなりの生活を送ってきた


そして、それなりの大学を出て


それなりの会社に就職した。





そして、多分


これからもレールの上を走っていく。


一歩も足を踏み外す事もなく、ただ前だけを向いて。


少しは遊んだり、はめを外したりもしたけど


でも、未来はきっと決まっている。






それなりの人と結婚して


それなりの家族を作り上げていって


それなりの生活を送っていく。




決められたレールの上の人生。




そんな人生。



もしかして



つまらない?



それは、本当の自分?




→Yes

→No














あれ? 珍しく出席してるんだ?





今日は課長である如月さんの送別会。


そこには、いつもいないはずのその人の姿があった。








ここの部署に異動になって半年余り。
でも、こういう場で大野さんの姿を見るのは初めてだった。


今回異動になる課長である如月さんは大野さんの事を
入社当時から特別に目をかけていたらしい。
確かに大野さんの発想力と想像力は
他の人とはまた違った観点があって
その才能はずば抜けていた。


だけど2年前から家庭の事情で残業ができなくなり
本人の希望で、正社員から契約社員に変わったという事だった。
そしてそのせいかどうなのかわからないけど
大野さんはこういう送別会などで見かけることはほとんどなかった。
だから大野さんがここにいる事に驚く。


そして大野さんの隣にはなぜか上座に座っていた如月課長が
隣にきていて異動したくないと愚痴っているようだった。
それを大野さんが慰めながら励ましている。
その姿を見ながらどっちが上司か何だかわかんねえな
なんて思いながらその姿を見つめた。











送別会は和やかにすすんでいた。
一通りのあいさつが終わり飲み物が次々と運ばれてくる。
そして食事は創作料理やという名にふさわしく
趣向を凝らした料理が並んでいく。


そして若いのだからとあちらこちらから酒を勧められる。
それを適当にかわしながらも胃の中は
どんどんビールで一杯になっていった。
だからちょっと一休みとトイレに避難する。


ふうっと大きくため息をつき部屋に入ると
そこには一人の先客がいた。


大野さんだ。


さっきまで如月課長にしつこく絡まれていたようだったけど
大丈夫だったのだろうか。
一つ違いの大野さんも大変だな、
なんて思いながらその姿を見つめる。


他には誰もいない。
大野さんは自分に気付かず手を洗っている。
外では大きな笑い声や談笑する声が響いていた。
ここの空間とはまるで別世界のよう。


そう言えば今までじっくりと大野さんの事を
見た事なかったなと思いながらその姿を見つめた。
その姿を見つめながらこんな事男の人にもうなんて思うのは
変かも知れないけど綺麗な顔をしているなと思う。


そしていつまでたっても動かずドアのところに
立ち止まって見ていたせいか
大野さんが不思議そうな顔をしてこちらを見た。











「……」

「……」


急に視線を向けられドキッとする。
無言でずっと見つめていたから
不審に思われたのかも知れない。


「珍しいですね?」

「……え?」

「……」


だから慌ててそう言って大野さんに話しかけた。
大野さんが不思議そうな顔をしたまま
真っ直ぐな視線で見つめてくる。
その真っ直ぐ見つめられる視線に頭の中が真っ白になり
何も言えなくなった。


まだ自分自身この部署に配属になって半年ということもあり
大野さんと二人で話すのはこの時が初めてだった。
いや、それより何よりこうして二人きりになるのも
初めてだった。


普段大野さんはこういう会に出席することはなかったし
仕事場でもお昼は一人でゆっくりしたいという人だったから
一緒にご飯さえ食べた事もなかった。


同じ部署内でもデザイン専門の大野さんとは
チームで一緒になることはあっても出先も別で
二人になる事は全くなく、また定時びったりに帰る大野さんとは
帰りが一緒になるということもなかった。
だから何だか無性に緊張してしまう。


だったらなぜ自分から話しかけたのかと言われてしまいそうだけど
でも、自分でもよくわからないけど
ずっと話してみたかったのだと思う。


無口で自分から話しかけるような人ではないけど
周りがなぜか構いたくなるタイプというのだろうか。
なぜか放っておけなくていつも誰かしらが
そばに寄ってきては話しかけられていた人。


ずっとそれが不思議だったけど大野さんを見て
何だかわかるような気がした。


「こういう場にいらっしゃるなんて、珍しいですね?」

「まぁ、お世話になった人だからね」


ドキドキしながら大野さんに話しかける。
緊張しているのが伝わったのか大野さんは
部屋に戻ろうとする足を止めてそう言ってくすっと笑った。
その笑った顔が何だか可愛らしいなと思う。


「随分、絡まれていたみたいですけど大丈夫ですか?」

「ふふっ大丈夫」


そう言って大野さんは苦笑いを浮かべた。


「如月課長、大野さんの事が本当に好きなんですね…」

「……」


やっぱり如月課長のお相手をするのは大変だったのかなと
その顔を見て同情さえ感じる。


「あ、いや、すみません」

「……?」


変な事を言ってしまったかなと、慌てて説明しようとするけど
何と言っていいかわからなくなってきて言葉に詰まる。


「あの、変な意味じゃなくって、人としてというか。
いや人としてっていうのもおかしいか。えっと何て言うか…」

「ふふっ」


テンパってるのが分かったのか
大野さんがおかしそうにふふっと可愛らしく笑った。









「すみません、なんか変な事言って」

「ううん。如月課長俺の事好きみたい。
さっきもお前も一緒に来いって言われて泣かれちゃった」


そう言って大野さんはクスリと笑う。


「ええ? マジですか?」


あの如月課長が?
鬼よりも厳しいと噂されている如月課長が
見つめられると石にされてしまうという
如月課長が、泣いた?


「今日なんてずっと俺の隣から離れないしね~」

「そうですよね」


その言葉に信じられないような気持でいると大野さんがそう言ってくる。
確かに、最初上座にいたはずなのにいつの間にか大野さんの隣に来て
それからずっと大野さんの隣を陣取っていた。


「それに酔っぱらってんのかず~っと腿に手ぇ置かれちゃってて
重いんだよねぇ」

「ええ? そうなんですか?」


っていうか重いとかそんな事言ってる場合じゃないんだけど
と思いながら大野さんを見るとくすくすおかしそうに笑っていた。


「そう。それに~」

「……?」

「こんな風に話ししてくるし、ね」

「……!」


そして、突然大野さんが30㎝位前まで顔を近づけてきて
耳元でそう言って、ふふって笑った。
急に目の前に大野さんの顔がドアップになって
驚いて思わずゴクリとつばを飲み込んだ。


そのまま呆然となって立ち尽くしていると
大野さんはいたずらっ子みたいな顔をして
ふふって笑ってそのまま行ってしまった。


今のは一体何だったのだろうか?


如月課長の事であまりにも驚いていたから
揶揄われただけだろうか。


大野さんの事が全く分からなかった。


トイレから戻ると相変わらず如月さんは相変わらず
大野さんの隣を陣取っていて何だかお互い距離が近い。
そしてもどってきた自分に気付くと
大野さんはふっと笑いかける。
その姿を見てまたドキッとした。









それからの事はあまり記憶がない。


大野さんの言った言葉が


近づいてきた大野さんの綺麗な顔が


思い出されては消し


思い出されては消し


ずっと頭の中でぐるぐると回っている。









もう他の人の話なんて耳に入らない。


酒を飲んでいるふりをして


話をするふりをして


ずっと


大野さんの事を見ていた。






そして


トイレに行っている間に


いつの間にか大野さんの姿は




なくなっていた。







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2 コメント

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翻弄されていますね~ (白紙)
2016-07-05 22:16:46
 大野さんは正面向いていると変な顔ばかりするけど、無心の横顔とか、ちょっと俯いた時には、作ったように綺麗な顔になるから、はっとして思わず見入ってしまいます。職場でいきなりそんな人を見かけたら、レールから外れても追いかけてしまうかも。今回のお話を読んで題名がありながらも、「wanna be…」の歌詞が浮かびました。智さん、何気に挑発していませんか?そして直後にはさっさと帰って突き放す!残業できない家庭の事情も気になります。今、仕事の忙しい時期でお疲れ気味なのですが、こうやってお話を読ませていただけると、明日からまた頑張ろうと思えます。いつもありがとうございます。それではまた。
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白紙さんへ (きらり)
2016-07-06 18:39:45
白紙さん、こちらこそいつもコメントありがとうございます。
私の方こそ嬉しくてそして次の話への活力となっています。
(ゆっくり更新ですが)ありがとうございます♪

大野さんはそうですね。自分が映ってるとわかると変な顔するし
バラエティとかの小芝居ではふざけてしまうし
帽子をかぶらせると全部前髪をあげてしまうし
中々美しさを見せてはくれない人ですよね。
でも無意識の時は凄く綺麗なお顔を見せるんですよね。
今回は小悪魔大野さんで、翔くんは振り回され翻弄されていますね~。
実際もそんな感じが…でもそんな二人が大好きなんですよね。
おおっおっしゃる通りwanna be…っぽいですね~。
嬉しかったです♪ありがとうございました♪
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