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きらり

つないだ手 2

2012-08-07 15:48:51 | つないだ手
その人が京都に行くと聞いたのはそれからすぐの事だった。


だけどどうしてもその話が信じられなかった。嘘だと思いたかった。
そして本人に直接確認してみたかった。

でも、その人はいつもその人と同じくらいの年の人と一緒にいたから
話しかけるのは至難の業だった。
歯がゆい気持ちを抑えながら遠くからその人を見つめる。
その人はいつもと変わらず周りにいる人達と笑顔で話をしている。

その姿を見るとその人が京都に行ってしまうなんて考えられなかった。
何とか一人になった瞬間を見つけ話しかける。
誰もいない場所に連れて行き本人に直接確認する。
「大野くん、京都に行くって本当?」
嘘だと言ってもらいたくて、そんな事ないよって言ってくれると信じて、
心の中で強く願いながらそう聞く。

「うん。」
そんなこちらの思いも知らずあっさりそうだと答える。
「何で…?何で行くの?ここにいればいいじゃん」
京都だよ。京都って言ったら凄く遠いんだよ。
逢いたくてもすぐに逢えない距離なんだよ。
本当に分かってる?そう心の中で訴える。

「うーん。もう決めちゃったから」
その人はまっすぐな目をしてそう答える。
本当なんだ。その現実が重くのしかかる。

もうここにきてもあなたはいないんだ。
あなたを見つめているだけでよかったのに。
あなたのダンスを見ているだけで満足だったのに。
ここに来てももうそれができないんだと思うと絶望しかなかった。

「京都なんて行かないで」
我が儘を言っているのは分かっている。
でも言わずにはいられなかった。
その人は困った顔で黙ったまま見つめ自分を傷つけない言葉を探している。



あなたの周りにはいつも人がいた。
体つきが華奢で綺麗な顔のあなたは周りの人に
何だか守られているみたいだった。
そして自分もいつかその中に入りたいと思っていた。

自分は3つも年下で今の状況ではとてもじゃないけどあなたを
守ることなんてできない。
ましてや中学生の自分には京都についていく事さえもできない。
そんな現実が歯がゆかった。



「好き」
いつも伝えているけどやっぱり伝えたくてそう言った。
「…知ってる。」
優しいあなたは微笑みながらそう答える。
「行かないでなんて言ってごめん。
ずっと待ってるから、すぐ帰ってきて」
京都に行くと決めてしまったあなたを変えることなんて
今の自分にはとてもじゃないけどできない。
諦めてそう言うと
「たまに帰ってくるから」
ちょっと安心したようにあなたはそう言った。


「好き」
好きだという思いがあふれもう一度言った。
そしたらゆっくりゆっくり顔を近づけてきたかと思ったら
頬にチュッとされた。
びっくりして顔を見つめるとふふっといつものように笑いかける。
そして
「知ってる」
優しく微笑みながらもう一度そう言った。


「好き。大好き。」
耐え切れずそう言って抱きつくとその人は優しく身体を抱きしめ返してくれた。








大宮でした。

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