TATSURO SHIBUYA + ARCHITECTURE LANDSCAPE DESIGN STUDIO

アーキテクチュアは建築、ランドスケープは景観。風景を生かす建築環境デザインに取組んでいます。

雪の座布団のような、プライバシーを担保するマウンド

2017-03-01 09:16:41 | *西根の家
西根の家の冬の様子。

けっして雪に埋もれている訳ではありません。。
残土を活用して築いた土のマウンド(土手)。通りからの視線をカットしてプライバシーを確保するために計画しています。

西根の家は、このエリアの集落の建ち方に習って、東面して建っています。(西から強風がふくため)
冬の限られた日射を最大限取り込むために、リビングダイニングは間口5間(約9m)の大開口を計画していますが、大開口を成立させるためにマウンドというランドスケープ的な手法でプライバシーを担保しています。

だいぶ雪は減ってしまいましたが、今年はそこそこ降りました。
一晩で1m積もることもこのエリアでは日常です。


屋根は切妻ではなく、寄棟。
勾配は、建て主さんや大工さんなど地元の方々にヒヤリングして、確実に落雪するという三寸五分。(落雪勾配はエリアによって異なります)
積雪荷重2mという豪雪地域であるこのエリア。
屋根を寄棟にすることで一箇所に集中せずに雪を分散して落雪することが可能になります。
落雪した雪は、井水を利用した散水消雪で雪かき不要にしています。

寄棟は切妻に比べて、圧倒的に技術を要する屋根のかけ方。特に今回はプラン的な制約から45度ではない角度でひらいた寄棟になったために、施工の技術力が不可欠でした。一見すると単純な寄棟のように見えますが、地域の職人さんたちの優れた技術があって、初めて実現できた建物です。

自分の山の木で家を建てる。集落の建ち方に習った建築の配置。雪と生活との関係性。などなど
都市部では失われつつある建築と自然との関係性が、まだこのエリアでは微かに残っています。その糸口を丁寧に紐解き、形にする。そんな滋味な建築が好きです。

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「雪国の住医」が教える断熱のコツ! どこを断熱するか?窓でしょ!!

2016-11-28 02:44:28 | *西根の家
寒くなってきましたね。
東京でも初雪が降り、冬の寒さも本格化する季節です。

雪国の住まいの「寒い、暗い」という特徴をネガティブにとらえるのではなく、しっかり対策することで、「暖かく、明るい」というポジティブに変えること、ネガをポジに変える豊かな価値を創造することに日々取組んでいます。

結論から先にいえば、一番の近道は、「窓」などに代表される「開口部」の断熱性能をあげることです。もしくは、開口部の熱損失を抑える仕組みを建築的に計画することです。
同じお金をかけるのであれば、「窓などの開口部まわり」にお金をかけたほうが、屋根や壁よりも費用対効果が圧倒的に高くなります。

皆さんは、ご自分が暮らしている住まいで、①天井から屋根面までの厚さ(屋根の厚さ)、②壁の厚さ(室内から屋外までの厚さ)、③窓の厚さ(サッシとガラスの厚さ)
がどのくらいあるのか考えたことがありますか?

実際に測るまでもなく、厚さが厚い順に①屋根>②壁>③窓となりますよね。

①の天井懐は、屋根の構造や勾配にもよりますが、だいたい20cmくらい。
②の壁の厚さは、せいぜい15㎝から20cmくらい。
ところが、
③の窓の厚みは、数センチしかありません。ガラス自体は数ミリしかありません。
屋根や壁の厚みに対して、窓の厚みは圧倒的に少ないということに改めて気づかれると思います。
※厚みは標準的な住宅を想定しています。

一般的に、建築ではこの厚みの中で断熱をすることになりますので、厚みの厚い方が断熱性能を高くしやすいという利点があります。
(最近では遮熱技術や真空断熱など必ずしも厚みを必要としない断熱方法もありますが、現時点では一般的な方法とは言えません。。)
言い換えれば、屋根や壁は断熱が容易で窓の断熱は難しいということになります。

数十センチから十数センチある屋根や壁に比べて、数センチで室内と屋外とを隔てている窓は、圧倒的に断熱性能が低いことが想像できると思います。


屋根や壁の断熱に使われる一般的な材料として、グラスウールやポリスチレンフォームがあります。(他にもたくさんの断熱材の種類がありますが、ここでは一般的な材料としてあげています。)よほど特殊な事情がない限りは、屋根や壁の断熱が省略されるということはありません。
普及している分、コストも安いし、必要十分とは言えないかもしれませんが、それなりの断熱性能を得ることができます。

しかし、窓などの開口部に関しては、まだまだ十分とは言えません。
熱は、温かいところから冷たいところへ移動する特徴がありますから、屋根や壁に比べて、窓などの開口部の断熱性能が圧倒的に低ければ、窓からどんどん熱が逃げていくことになります。。

某所のガラス窓の様子。雪国の公共施設なのに、まさかの単板ガラス。全面結露。


同じアングルのサーモグラフィー

サーモグラフは冷たいところほど青く、温かいところほど赤く表示されます。窓(ガラス面)が圧倒的に冷たく、真っ青。そして、天井面が真っ赤。
床面と窓面、天井面との温度差が極端に大きいということが分かると思います。
せっかく暖房しても窓から熱がダダ漏れです。。これでは光熱費も青天井。

体感温度は、(室温+表面温度)/2で計算されるので、床と天井の温度差が大きければ、その分体感温度も下がる傾向にあります。室内の温度差が小さいほど光熱費は節約できます。ヒートショックのない健康的な暮らしには断熱は必要不可欠な要素です。


高性能のサッシ、窓はまだ高価ではありますが、最近では各メーカーで性能の高いサッシがしのぎを削っています。
屋根や壁の断熱に比べて、窓の断熱性能に予算をかけることで、温熱環境は圧倒的に改善されます。
もっといえば、窓さえ高性能になるだけで、日々の光熱費を改善することができます。
光熱費は、建築のライフサイクルコストにずっとかかってきますので、高性能な窓にかかるイニシャルコストは光熱費が浮いた分のランニングで回収することができます。


西根の家では、間口5間の開口部に高性能木製サッシを採用しています。
これによって、非常に高い断熱性能と気密性能を担保したうえで、明るく開放的な住まいを実現しています。


【西根の家】雪国の建築の未来形
西根の家のオープンハウスを行いました。このような機会を設けることができたのも、住まい手であるクライアントのご理解とご協力があったから。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとう......


【上山の家】築150年超の古民家の超断熱高気密化(大改造!!劇的ビフォーアフター「雪かきしながらトイレに行く家」)
断熱リフォームの全貌

https://www.isover.co.jp/before-after/kaminoyama


大改造!!劇的ビフォーアフター 16 03 20 1


【上山の家】断熱材:超高性能グラスウールλ34
現場に超高性能グラスウール(マグラムダλ34)が届きました。うず高く積まれた断熱材の山!!この量で、まだ全体の半分くらい。圧縮パックに入っていて施工時には膨らむので、実際には......

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【西根の家】『オシャレな平屋外観。』homify日本版に掲載されました

2016-09-24 19:31:41 | *西根の家
homify日本版に「西根の家」が掲載されました。

西根の家/House in NISHINE: アーキテクチュアランドスケープ一級建築士事務所が手掛けたモダン家です。


寒さを気にしない超高性能窓を採用した明るく開放的な雪国の建築の未来形デス。
和風にカテゴライズされてしまっています(笑)

https://www.homify.jp/ideabooks/1319817/オシャレな平屋外観。あなたならどれを選ぶ?



ゆったりとした山並みの中に建つこちらの住まいは、縁側がぐるりと住まいを囲む昔ながらの佇まいを持つ日本的なスタイル。
リビング・ダイニング・キッチンと大きくゆとりある間取りに沿う縁側の窓も、楽に全開放できる引き戸式です。
軒下に作られた長い縁側は、部屋の中へ入る日光量を調節してくれ、また夏場は直接日差しが入らず涼しく過ごすことができます。
自然を活かし、自然を生活に取り入れることのできる縁側のある和風の住まいは魅力的ですね。

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【西根の家】homifyに特集いただきました

2016-07-06 18:55:47 | *西根の家
homify日本版と韓国版に「西根の家」を掲載いただきました。

アーキテクチュアランドスケープ一級建築士事務所의 모던 다이닝 룸

素敵な写真は船山裕紀さんに撮影していただきました。


<日本版>
風通しも眺めも最高!開口がぐるっと囲う平屋の住まい
https://www.homify.jp/ideabooks/854522

<韓国版>
전원생활의 소박한 정을 담은 단층 목조주택
https://www.homify.co.kr/ideabooks/737356

注)韓国版では岩手県になっていますが、山形県です。
→どこに連絡したらよいものか。。


homify韓国版に載っていたキーワードを箇条書きにしてみます。(google先生の翻訳だと日本版と内容違いますね。。それぞれに記者さんがいるのかな。。)
韓国での新規プロジェクトお待ちしております!!

개방적인 구성과 정감있는 툇마루

수평의 느낌을 강조하는 외부 디자인

개방감이 두드러진 내부의 평면구성

깔끔하고 밝은 분위기의 주방 디자인

마을 풍경을 담는 개구부 디자인

전통건축 요소를 적용한 다다미방

한 지붕 아래 두 채로 나눠 구성한 주택

아늑한 분위기가 머무는 현관


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【西根の家】キッチンから見える最高の風景

2016-06-16 13:46:08 | *西根の家


キッチンから見えるソメイヨシノの大木。
すこし前のことですが、クライアントさまにご協力いただき、桜の季節の撮影を行いました。

住まいの中で過ごす時間のうち、キッチンで過ごす時間はすくなくありません。
住まいを考えるとき、キッチンから見える風景をリビングから見える風景と同じくらい大切にしています。

設計当初からこの桜の木を眺めながらすごしたい。
という思いは、共有しておりました。

実は、敷地の外の風景なのですが、農地整備を記念した石碑に植えられた記念樹のため、枯れることがない限りは、伐採される心配はありません。
こういった美しい風景を借景として建築に取り込んでしまう計画こそが、建築設計の醍醐味のひとつでもあります。

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【西根の家】雪国の建築の未来形

2015-11-24 10:23:59 | *西根の家
西根の家のオープンハウスを行いました。
このような機会を設けることができたのも、住まい手であるクライアントのご理解とご協力があったから。
この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
ご来場いただいた沢山の皆さま。誠にありがとうございました。





床や外壁など、目に見える場所や触れる場所のほとんどはクライアントの山の木で仕上げています。
山の木を使って家を建てる、そんな魅力的なプロジェクトに関わる機会を頂けたことに感謝しております。
実際に取組んでみると、本当に大変でした。

まず、山の木を切ってくださる木こりさんが地域にはおらず、近隣の町の森林組合に頼みました。
約1年の自然乾燥ののち、切った後の製材も、隣町の製材所に運びました。
最終的に、板の実加工は隣県にもっていって加工をしなければなりませんでした。

かつては、地縁社会の中で、地域の材料を使って、地域の人たちが協力して建てていた住まい。
これを現代において、実現することがこんなにも特殊で特別なことだということを、改めて感じました。

特徴的な連続する垂木(登り梁)は、積雪荷重2Mという豪雪に耐えるような骨太の建築になりました。
おのずと梁せいが大きくなるため、そのまま現しとして見せて、素材をそのまま表現するような、素朴ですっぴんのデザインを目指しました。そのための繊細なディテールは、細心の注意を払って隠しています。

主な仕上げは、鎧張り(外壁)や瓦棒葺き(屋根)など、骨太の木組みにも視覚的にバランスするような「手わざ」が見えるような仕上げにしています。
外壁の杉板には、オーガニックの木質防護保持剤(ウッドロングエコ)を塗布しています。紫外線にあてて人為的にエイジングさせることで生じる独特の美しい風合いが特徴です。
腐朽菌の侵入を防ぐと同時に、塗料とは違って塗り替えが不要な材料として、採用しています。

リビングダイニングの大開口木製サッシは、断熱気密に優れたエコスライド(アルス株式会社)を採用し、室内側に断熱ブラインド(ハンターダグラス)を併用しております。さらに、窓付近のコールドドラフト対策として、床埋込型のパネルヒーティング(ピーエスグループ)を補助暖房として採用しています。
主暖房は、ペレットストーブ(シモタニ)を採用しています。



【西根の家】山形県長井市
計画地は積雪2M を超える豪雪エリア。
豊かで厳しい自然環境のなか、自分の山の木を使って建てた明るく開放的な新しい雪国の住まいです。

設計監理:渋谷達郎+アーキテクチュアランドスケープ一級建築士事務所
構造設計:鈴木啓/ASA
設計協力:大類真光
施工:株式会社マルニ建工

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【西根の家】外構工事も大詰めです

2015-10-18 16:17:13 | *西根の家
シンボルツリーがはいりました。一点豪華主義(笑)
ヤマボウシ(株立)H=5.0m、なかなかの大きさです。
腰かけの石は現場から出てきたものを活用しています。
外構工事も大詰めです。











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西根の家/山の木で住まいをつくる:外構工事がはじまります

2015-08-24 09:07:51 | *西根の家

(撮影:土屋勇太さん)

自分の山の木をつかって家を作るプロジェクト。
ようやく建物が竣工いたしました。
山の木を伐採してからまる1年。外壁だけでなく、床や内部構造に山の木を活用した住宅。









外構工事はこれからです。
懐かしくも新しい、そんなこれからの雪国の住まいづくりに引き続き取組んで参ります。

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模型/手を動かすことの大切さ

2015-04-07 13:32:57 | *西根の家
私たちは、設計段階で様々な縮尺で数多くの模型を作り、実際の空間を検討しています。


建築で多く用いられる図面は実際の3次元の空間を平面的に投影した二次元の世界。
これら2次元の図面をもとに建築が作られるので、目にする機会も比較的多いと思います。

一方で、図面に描かれている間取りや寸法を見て、実際の空間の広さをイメージできる人は、専門家を除くと一般的にそれほど多くはありません。
畳のある環境で育った世代は、○畳といえば、だいたいどの位の広さなのか空間をイメージすることができるといわれていますが、これは世界的に見ても日本人だけがもつ優れた能力とされています。


西根の家では、1/100、1/50、1/30と設計の進捗に伴い縮尺を変えながら、検討を進めてきました。
検討時に作った模型は、現場が始まってからも職人さんとの意思疎通に有効です。
現場では、必要があれば、モックアップと呼ばれる1/1の実物大模型を作り、外壁や色などの仕上げを検討しています。

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【西根の家】基礎コンクリート打設

2015-04-01 05:35:39 | *西根の家
山の木で家をつくるプロジェクト。
ようやく基礎コンクリートの打設ができました。


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