隈さんの著書を読んだ。
新書だけあって、とても平易な文章で書かれていて読みやすい。
広重美術館のところのくだり。設計プロセスのところの話がとても腑に落ちた。
以下引用。
「いきなり最初から材料を考え、そのディテールまで考える。あの雨のように細い杉というのが、どのようにしたら実現できるかを、いきなり考える。
・・・・中略・・・・
その細さが、この技術、この材料でいけるという目安がたたない限りは、平面をきめても、形をきめても、何の意味もない。
こんな物質、こんなディテールで作られるからこそ、この配置、この平面、この断面にすべきだという順序で、デザインを進めていく。」
設計プロセスにおいて、どのくらいのスケール(縮尺)で検討をしていくかという話に近いかもしれない。
私の場合、建築の規模にもよるが、1/1000とか1/500で全体の配置や都市との関係を見たら、次は1/200とか1/100、1/50のプランのスタディ。
同時並行で1/20~1/1の詳細を考える。
1/50と1/1のあいだは、案が深度化するにつれて、常に行ったり来たりする。
自然素材をできるだけ「素」のまま見せるためには、どんなふうに取り付けたらいいのか、という「見せ方」はやはり、ディテールなしではわからない。
そのディテールは多くの場合、構造や設備などのエンジニアリングと密接にかかわってくる。その際、エンジニアとのコミュニケーションに用いられるのが、図面や模型、スケッチだったりする。
一方、建築も図面だけでなく、文字にする(言葉にする)ということが私は大切だと思っていて、極論すれば、図面なしで言葉だけで説明できるくらいわかりやすい建築というのが理想だと思っている。
建築の計画が一つの物語のように説明できれば、どんな人にもわかりやすく説明できると思うのだ。
「その低い庇の下を通り抜けると正面に木製の扉があり、そこを入って右に曲がると漆喰の白壁がある…」といったように。
これは何も、建築に限ったことではない。例えば、ランドスケープの計画だって、言葉で説明できるのではないだろうか。
私たち専門家は、知らず知らずのうちに専門用語を使っている。
そうではなく、新聞記事のようにわかりやすく、空間を言葉で説明したいものだ。