TATSURO SHIBUYA + ARCHITECTURE LANDSCAPE DESIGN STUDIO

アーキテクチュアは建築、ランドスケープは景観。風景を生かす建築環境デザインに取組んでいます。

「雪国の住医」が教える断熱のコツ! どこを断熱するか?窓でしょ!!

2016-11-28 02:44:28 | *西根の家
寒くなってきましたね。
東京でも初雪が降り、冬の寒さも本格化する季節です。

雪国の住まいの「寒い、暗い」という特徴をネガティブにとらえるのではなく、しっかり対策することで、「暖かく、明るい」というポジティブに変えること、ネガをポジに変える豊かな価値を創造することに日々取組んでいます。

結論から先にいえば、一番の近道は、「窓」などに代表される「開口部」の断熱性能をあげることです。もしくは、開口部の熱損失を抑える仕組みを建築的に計画することです。
同じお金をかけるのであれば、「窓などの開口部まわり」にお金をかけたほうが、屋根や壁よりも費用対効果が圧倒的に高くなります。

皆さんは、ご自分が暮らしている住まいで、①天井から屋根面までの厚さ(屋根の厚さ)、②壁の厚さ(室内から屋外までの厚さ)、③窓の厚さ(サッシとガラスの厚さ)
がどのくらいあるのか考えたことがありますか?

実際に測るまでもなく、厚さが厚い順に①屋根>②壁>③窓となりますよね。

①の天井懐は、屋根の構造や勾配にもよりますが、だいたい20cmくらい。
②の壁の厚さは、せいぜい15㎝から20cmくらい。
ところが、
③の窓の厚みは、数センチしかありません。ガラス自体は数ミリしかありません。
屋根や壁の厚みに対して、窓の厚みは圧倒的に少ないということに改めて気づかれると思います。
※厚みは標準的な住宅を想定しています。

一般的に、建築ではこの厚みの中で断熱をすることになりますので、厚みの厚い方が断熱性能を高くしやすいという利点があります。
(最近では遮熱技術や真空断熱など必ずしも厚みを必要としない断熱方法もありますが、現時点では一般的な方法とは言えません。。)
言い換えれば、屋根や壁は断熱が容易で窓の断熱は難しいということになります。

数十センチから十数センチある屋根や壁に比べて、数センチで室内と屋外とを隔てている窓は、圧倒的に断熱性能が低いことが想像できると思います。


屋根や壁の断熱に使われる一般的な材料として、グラスウールやポリスチレンフォームがあります。(他にもたくさんの断熱材の種類がありますが、ここでは一般的な材料としてあげています。)よほど特殊な事情がない限りは、屋根や壁の断熱が省略されるということはありません。
普及している分、コストも安いし、必要十分とは言えないかもしれませんが、それなりの断熱性能を得ることができます。

しかし、窓などの開口部に関しては、まだまだ十分とは言えません。
熱は、温かいところから冷たいところへ移動する特徴がありますから、屋根や壁に比べて、窓などの開口部の断熱性能が圧倒的に低ければ、窓からどんどん熱が逃げていくことになります。。

某所のガラス窓の様子。雪国の公共施設なのに、まさかの単板ガラス。全面結露。


同じアングルのサーモグラフィー

サーモグラフは冷たいところほど青く、温かいところほど赤く表示されます。窓(ガラス面)が圧倒的に冷たく、真っ青。そして、天井面が真っ赤。
床面と窓面、天井面との温度差が極端に大きいということが分かると思います。
せっかく暖房しても窓から熱がダダ漏れです。。これでは光熱費も青天井。

体感温度は、(室温+表面温度)/2で計算されるので、床と天井の温度差が大きければ、その分体感温度も下がる傾向にあります。室内の温度差が小さいほど光熱費は節約できます。ヒートショックのない健康的な暮らしには断熱は必要不可欠な要素です。


高性能のサッシ、窓はまだ高価ではありますが、最近では各メーカーで性能の高いサッシがしのぎを削っています。
屋根や壁の断熱に比べて、窓の断熱性能に予算をかけることで、温熱環境は圧倒的に改善されます。
もっといえば、窓さえ高性能になるだけで、日々の光熱費を改善することができます。
光熱費は、建築のライフサイクルコストにずっとかかってきますので、高性能な窓にかかるイニシャルコストは光熱費が浮いた分のランニングで回収することができます。


西根の家では、間口5間の開口部に高性能木製サッシを採用しています。
これによって、非常に高い断熱性能と気密性能を担保したうえで、明るく開放的な住まいを実現しています。


【西根の家】雪国の建築の未来形
西根の家のオープンハウスを行いました。このような機会を設けることができたのも、住まい手であるクライアントのご理解とご協力があったから。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとう......


【上山の家】築150年超の古民家の超断熱高気密化(大改造!!劇的ビフォーアフター「雪かきしながらトイレに行く家」)
断熱リフォームの全貌

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【上山の家】 ウッドロングエコ

2016-11-14 13:49:59 | *上山の家/雪かきしながらトイレに行く家
上山の家(ビフォーアフター:雪かきしながらトイレに行く家)
本編では一瞬だけ映ったウッドロングエコの塗装の様子。
実は東北芸術工科大学のプロジェクトチームの学生さん達に協力していただいて、一緒に塗ったものです。
11月の凍てつく寒さの中、300枚以上の杉板に一枚一枚丁寧に塗っていただきました。そんな思いのこもった県産材の杉板を外壁に全面的に採用することができました。


この自然保護剤を先に塗っておくと、均一にエイジングしたような、紫外線でいい感じの色になるのが好みです。
材料はけして安くはないのですが、自分たちで塗ることができるので、参加型の建築にはもってこいの材料だったりします。
古民家再生・黒谷プロジェクトの時に知って、花園ベース・HANACOYAに使ったのが最初で、家カフェ・Bio、西根の家、そして今回の上山の家と採用しています。
木材を外部に使う場合、どんな塗料でも色の退色や塗り替えなど、建物が建った後のことに気を使う必要があるのですが、ウッドロングエコであれば、人為的にエイジングしてあるので、そういった面での心配ごとを軽減できます。



【上山の家】現場ワーク 木材保護材(ウッドロングエコ)塗装
山形で取組んでいる築135年を超える古民家のリフォーム案件。非常勤講師をしている東北芸術工科大学の学生さんたちと現場ワークを行っています。今日は、木材の保護用に自然由来の防腐効......


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