そこで、冷蔵庫を探してみると、豚しゃぶが出来そうではないか。葱と人参、白菜が見当たらないのでキャベツで代用、この辺りが男の料理だ。包丁さばきは長男の方が巧みなのだが、飯炊きを任せ、包丁は一家の長に譲らせた。次男のテーブルメイキングはプロ仕込みなので瞬く間にお店並みになっていく。
鍋の具はテキトーがよろしいようである。いや、ぼくが扱えば何でもテキトーなのだが。ただ、マルチカッターなるもので人参の千切りを、量の加減が分からんから、いっぱいこしらえ放り込んだら、鍋の彩りがよく映えた。結果オーライという奴か。それにしても、あれやこれや語らいながら食すのは楽しいものである。
ブランチにはピザトースト。それにしてもドラえもんのポケットのように何でもでてくる冷蔵庫である。家人の家族を餓えさせない配慮に感謝する。ピザソースを絨毯に、ベーコンを敷き、人参、それに玉葱のミジン切りの、カッターのおかげだ、山盛りを添え、チーズを散らす。一枚で止まらない美味さは後が怖い。
夕飯は、次男が冷蔵庫から冷や飯を見つけ出し、何日前のだ、炒飯。長男がにんにくの芽とベーコンの炒めもの。匂いより美味さの追求か。御代りの競争で、あっという間におひつが空っぽだ。ふだんは時間差で別々に食べるせいか、こんなことは滅多にない。揃って食卓を囲む素晴らしさを再認識した次第。
借りてきたDVDを久しぶりに観る。レイ・チャールズの生涯を綴った「Ray」である。"Georgia On My Mind"、"Hit The Road Jack"、"I Can't Stop Loving You(愛さずにいられない )"、"What'd I Say"、"Route 66"とおなじみの曲に揺すぶられ、のめり込む。エンドロールを繰り返し流してしまった。R&Bに止まらずカントリーにも進出したレイ。それがいかに勇気のいることか、黒人カントリー歌手、チャーリー・プライドの扱いを見てもよく分かる。ヒットチャートを飾ることを苦もなくやってのける。眼は見えずとも、それだけに鋭い洞察力を身につけなければならなかったのだろう。自信と苦悩がない交ぜに肥大してゆくシーンが凄まじい。お薦めの1本である。納戸から"Unchain My Heart"を引っ張り出してきた。よく保存しておいたものだ。