鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

緩和ケア特別講演会

2016-10-07 11:47:52 | 日記
蘆野先生が毎年荘内病院で行っている緩和ケアの講演会を拝聴してきました。

蘆野先生のプロフィール

講演のテーマは「地域緩和ケア」! 「地域包括ケア」と間違えそうなタイトルでしたが・・。

地域緩和ケアとは、進行したがん、心不全などの慢性疾患、神経難病、進行した認知症など、ある程度予後が予測される疾患を対象に、プリマリケア医と専門ケア医、多職種・地域(病院・施設・住民など)の協働で、その人らしい終末期から看取りまでを支えるしくみであり、ケアには、身体的ケア、心理社会的ケア、コミュニケーション(情報提供、相談支援など)、スピリチュアルケア、死別のケア、グリーフケアなどが含まれるとのこと。

要するに、質の高い終末期ケアを目指した地域ぐるみの支援体制ということのようです。

地域緩和ケア実現のための課題として、以下を挙げていました。

 ・人材育成
 ・抗がん剤治療の中止基準の策定 
  (死の直前まで抗がん剤の使用例が増えている)
 ・緩和ケア対象者を早期に選定するめの基準づくり
 ・効果的な緩和ケアを提供するためのアセスメントツールの選定とデータベースの構築
 ・在宅ホスピスボランティアの育成
 ・市民啓発をヘルスケアの教育の一環に入れる
  (Advanced Care Planningの普及)


支援の目標は、あくまで本人が望む療養や死に方であり、
今の日本のように、本人より家族の意向が重視される現状では、
地域の支援体制が充実しても、本当に本人の希望に沿った対応ができるのか、
疑問を覚えました。

その意味でも、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)の普及が喫緊の課題と感じます。


以下、講義メモ
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緩和ケア特別講演会
日時:10月6日 18:30~を
場所:荘内病院講堂
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地域緩和ケアの普及に向けて
~地域緩和ケアからの提言~
社会医療法人 北斗 地域緩和ケア推進センター長 
蘆野吉和 先生

地域包括ケアシステム と 地域緩和ケア
 地域緩和ケアは、知医報包括ケアシステムの根幹を担う

人の一生
 人は生まれた時に死を背負って生きている
 死は人生の完結点

75歳ころまでは元気に活動できる人が多い
75歳以降は介護支援が必要な人が多くなる

死にゆく過程の軌跡
 ・突然死
 ・がん疾患
 ・重篤な慢性疾患
 ・高齢

80%の人は重篤な慢性疾患でなくなる
死が予測される時期が必ずある

多くの場合、自分が死を迎えることを意識せずに、病院へ入院し、亡くなっている。

自然の経過として迎える死を病院で迎えることの利点と欠点

利点
 ・最善の医療を受けたいという「満足感」
 ・治療で苦痛が緩和されることがある
 ・家族の介護負担が少ない
 ・看取りの場を探す必要がない
 ・家族の看取りの不安から解放される
 
欠点
 ・病院へ行っても助かるわけではない
 ・治療で苦痛が増す場合がある
 ・自由が失われる
 ・自立が損なわれる →フレイルが進み早く死ぬ
 ・社会、生活、家族とのつながりが絶たれる
 ・人間の尊厳が損なわれる
 ・国民の経済的負担が増える

看取り看取られる関連性をつくることが重要

ひとつの選択肢としての在宅

在宅死には、24時間対応の訪問看護ステーションは必須

在宅死には、死体検案数(都会では50%)も含まれる (必ずしも看取られているわけではない)

地域緩和ケア Community Based Palliative Care

・ホスピス・緩和ケアの歴史
・プラハ憲章
・緩和ケアの世界的潮流

地域緩和ケアのニーズ
 慢性心疾患が多い
 緩和ケアが必要な人の2/3はプライマリケアで対応できる、1/3は専門的ケアが必要(オーストラリア)
 
ドイツにおける地域緩和ケア支援システム SAPV
 
地域緩和ケア
 プライマリケアと専門的ケアとの重層構造
 多職種・地域 の協働
 ケアに以下の要素をふくむ
  
地域緩和ケアに必要な項目
 
専門的緩和ケアチームとは

地域緩和ケアの目標
 自分の希望する場所
 自分らしく
 尊厳を保てる
 少なくとも不幸な人生ではなかった
 同じ地域に住みたいと思える

地域緩和ケアを構築するための要点と課題

■地域緩和ケア普及のための課題
 ・人材育成
 ・抗がん剤治療の中止基準の策定 (死の直前まで抗がん剤の使用例が増えている)
 ・緩和ケア対象者を早期に選定するめの基準づくり
 ・効果的な緩和ケアを提供するためのアセスメントツール
 ・在宅ホスピスボランティアの育成
 ・市民啓発をヘルスケアの教育の一環に入れる


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