前回のパス学会でも報告し、以前から取り組んでいる受傷前BIと認知症の程度による マトリックス分類です。
4年分のデータ700例程をエクセルをいじくり回して、分析してみまし
ADLが比較的保たれている群においては、認知症の存在がADL回復の大きな障害になっていることが良く分かりました。
一方、BI40以下の群は、受傷前よりADLが改善する例が多く、寝たきり状態においてもリハビリテーションが重要であることも証明できたと思います。
マトリックス分類することで、ある程度の予後の予測が可能となり、
分類ごとにアウトカムを設定することで、より効果的なリハビリテーションに繋がれ良いかと思っています。
以下、現時点での取り組みのまとめ。
大腿骨近位部骨折における受傷前BIと認知症の程度による
マトリックス分類と予後予測
~マトリックス分類による退院時アウトカム設定~
<はじめに>
大腿骨近位部骨折患者の受傷前の状態は多様である。とくに、認知症の有無はリハビリテーションの阻害因子とされており、受傷前の状態を考慮したアウトカム(到達目標)設定が望まれる。
<分析の目的>
受傷前のBIと認知症の程度で、回復期病院退院時のBIを予測し、アウトカムを設定する。また、そのために必要なマトリックス分類を確立する
<分析の対象>
2014年~2017年の4年間で回復期病院退院時のBIが入力されている患者524名
(N:708)
<分析の方法>
受傷前BIと認知症の程度(認知症日常生活自立度)により試行的にマトリックス分類し、BIの推移(受傷前BI-退院時BI)を検討した。マトリックス分類は、受傷前BIの区切りを変えたり、認知症を3群や2群に分類するなどし、各群の例数やBIの推移を比較検討した。結果として、受傷前BIを90、40で区切る3分類とし、認知症は、その判定が必ずしも正確ではないことも考慮し、Ⅱa以下とⅡb以上の2群に分類することとした。
最終的なマトリックス分類と、想定される適切なバリアンス閾値(平均値+標準偏差+α)、その際に生じたバリアンス数、バリアンス率を図に示す。
各群の名称は、以下のA群~F群とする。
認知症:自立~Ⅱa 認知症:Ⅱb以上
90-100 A B
85-45 C D
40以下 E F
<分析の結果>
受傷前BI:90-100(ADLが概ね保たれている)群(A-B群)
自立~認知症軽症群(A群)の喪失BIの平均値は13.6、認知症重症群(B群)の平均値は40.0と大きな差があり、認知症の有無はADL取得に大きく影響する。
受傷前BI:45-85の群(C-D群)
認知症自立~軽症群(C群)の喪失BIの平均値は10.7、認知症重症群(D群)の喪失BI平均値は15.0であり、認知症の有無はADL取得に影響するが、A/B群ほどでない。
受傷前BI:40以下の群(E-F群)
認知症の有無に関わらず、平均すると退院時BIは受傷前BIを上回る。とくに認知症自立~軽症群(E群)でのBI獲得率が高い。
<大腿骨近位部骨折連携パス運用におけるマトリックス分類の活用>
該当患者が、どの群に位置するかを関係する職種間で共有することで、予後予測や目標設定に役立てる。
退院時のアウトカムとして以下を設定し、バリアンス発生例についてその要因を分析することで獲得BIの向上を目指す。
退院時のアウトカム(到達目標)
A群で、退院時BIが受傷前より30点以上低下していない
B群で、退院時BIが受傷前より60点以上低下していない
C/D群で、退院時BIが受傷前BIより40点以上低下していない
E/F群で、退院時BIが20点以上低下していない
表:受傷前BIと認知症の程度によるマトリックス分類
2014年~2017年の4年間での分析結果 (n:退院時BI入力済患者524名)
認知症
自立、Ⅰ、Ⅱa Ⅱb以上
受傷前BI
90-100 例数 175 20
喪失BIの最大値 75 75
喪失BIの最小値 -5 10
喪失BIの平均値*1 13.6 40.0
喪失BIの標準偏差*2 14.0 17.7
アウトカム想定値(*1+*2+α) 30 60
表記想定時の発生バリアンス数 27 3
バリアンス発生率 15% 15%
45-85 例数 85 113
喪失BIの最大値 80 70
喪失BIの最小値 -35 -40
喪失BIの平均値*1 10.7 15.0
喪失BIの標準偏差*2 21.3 21.0
アウトカム想定値(*1+*2+α) 35 40
表記想定時の発生バリアンス数 15 19
バリアンス発生率 18% 17%
40以下 例数 7 58
喪失BIの最大値 15 40
喪失BIの最小値 -50 -70
喪失BIの平均値*1 -8.6 -1.7
喪失BIの標準偏差*2 21.5 20.5
アウトカム想定値(*1+*2+α) 0 20
表記想定時の発生バリアンス数 1 9
バリアンス発生率 14% 16%
喪失BI = 受傷前BI – 退院時BI
数字が大きいほど、ADL回復が悪いことを示す。
マイナスは、受傷前以上にADLが改善したことを示す。
4年分のデータ700例程をエクセルをいじくり回して、分析してみまし
ADLが比較的保たれている群においては、認知症の存在がADL回復の大きな障害になっていることが良く分かりました。
一方、BI40以下の群は、受傷前よりADLが改善する例が多く、寝たきり状態においてもリハビリテーションが重要であることも証明できたと思います。
マトリックス分類することで、ある程度の予後の予測が可能となり、
分類ごとにアウトカムを設定することで、より効果的なリハビリテーションに繋がれ良いかと思っています。
以下、現時点での取り組みのまとめ。
大腿骨近位部骨折における受傷前BIと認知症の程度による
マトリックス分類と予後予測
~マトリックス分類による退院時アウトカム設定~
<はじめに>
大腿骨近位部骨折患者の受傷前の状態は多様である。とくに、認知症の有無はリハビリテーションの阻害因子とされており、受傷前の状態を考慮したアウトカム(到達目標)設定が望まれる。
<分析の目的>
受傷前のBIと認知症の程度で、回復期病院退院時のBIを予測し、アウトカムを設定する。また、そのために必要なマトリックス分類を確立する
<分析の対象>
2014年~2017年の4年間で回復期病院退院時のBIが入力されている患者524名
(N:708)
<分析の方法>
受傷前BIと認知症の程度(認知症日常生活自立度)により試行的にマトリックス分類し、BIの推移(受傷前BI-退院時BI)を検討した。マトリックス分類は、受傷前BIの区切りを変えたり、認知症を3群や2群に分類するなどし、各群の例数やBIの推移を比較検討した。結果として、受傷前BIを90、40で区切る3分類とし、認知症は、その判定が必ずしも正確ではないことも考慮し、Ⅱa以下とⅡb以上の2群に分類することとした。
最終的なマトリックス分類と、想定される適切なバリアンス閾値(平均値+標準偏差+α)、その際に生じたバリアンス数、バリアンス率を図に示す。
各群の名称は、以下のA群~F群とする。
認知症:自立~Ⅱa 認知症:Ⅱb以上
90-100 A B
85-45 C D
40以下 E F
<分析の結果>
受傷前BI:90-100(ADLが概ね保たれている)群(A-B群)
自立~認知症軽症群(A群)の喪失BIの平均値は13.6、認知症重症群(B群)の平均値は40.0と大きな差があり、認知症の有無はADL取得に大きく影響する。
受傷前BI:45-85の群(C-D群)
認知症自立~軽症群(C群)の喪失BIの平均値は10.7、認知症重症群(D群)の喪失BI平均値は15.0であり、認知症の有無はADL取得に影響するが、A/B群ほどでない。
受傷前BI:40以下の群(E-F群)
認知症の有無に関わらず、平均すると退院時BIは受傷前BIを上回る。とくに認知症自立~軽症群(E群)でのBI獲得率が高い。
<大腿骨近位部骨折連携パス運用におけるマトリックス分類の活用>
該当患者が、どの群に位置するかを関係する職種間で共有することで、予後予測や目標設定に役立てる。
退院時のアウトカムとして以下を設定し、バリアンス発生例についてその要因を分析することで獲得BIの向上を目指す。
退院時のアウトカム(到達目標)
A群で、退院時BIが受傷前より30点以上低下していない
B群で、退院時BIが受傷前より60点以上低下していない
C/D群で、退院時BIが受傷前BIより40点以上低下していない
E/F群で、退院時BIが20点以上低下していない
表:受傷前BIと認知症の程度によるマトリックス分類
2014年~2017年の4年間での分析結果 (n:退院時BI入力済患者524名)
認知症
自立、Ⅰ、Ⅱa Ⅱb以上
受傷前BI
90-100 例数 175 20
喪失BIの最大値 75 75
喪失BIの最小値 -5 10
喪失BIの平均値*1 13.6 40.0
喪失BIの標準偏差*2 14.0 17.7
アウトカム想定値(*1+*2+α) 30 60
表記想定時の発生バリアンス数 27 3
バリアンス発生率 15% 15%
45-85 例数 85 113
喪失BIの最大値 80 70
喪失BIの最小値 -35 -40
喪失BIの平均値*1 10.7 15.0
喪失BIの標準偏差*2 21.3 21.0
アウトカム想定値(*1+*2+α) 35 40
表記想定時の発生バリアンス数 15 19
バリアンス発生率 18% 17%
40以下 例数 7 58
喪失BIの最大値 15 40
喪失BIの最小値 -50 -70
喪失BIの平均値*1 -8.6 -1.7
喪失BIの標準偏差*2 21.5 20.5
アウトカム想定値(*1+*2+α) 0 20
表記想定時の発生バリアンス数 1 9
バリアンス発生率 14% 16%
喪失BI = 受傷前BI – 退院時BI
数字が大きいほど、ADL回復が悪いことを示す。
マイナスは、受傷前以上にADLが改善したことを示す。